広告効果を測るためのKPI指標と設定のポイント
Web広告の運用において欠かせないのが、広告に関するKPI設定です。広告出稿でKPIの指標とする項目にはさまざまなものがありますが、なかでもCPA、ROAS、ROIなど費用対効果に関する指標はとくに重視される指標です。
本記事では広告の効果測定を行うためのKPIの指標や計算方法、それぞれの指標を設定する際の考え方などについてわかりやすく解説しています。広告運用やデジタルマーケティング担当者は、さまざまなKPI設定や分析が行えるよう知識を高めておきましょう。
広告出稿におけるKPI
広告出稿においては、その目的に応じてさまざまなKPI指標があります。単純に広く利用されているからという理由ではなく、目的やKGIに合わせたKPI設定が重要です。
まずは広告出稿を行う目的や、それぞれに合わせた代表的なKPI指標について解説します。
認知を高めるためのKPI指標
自社サービスや商品、ブランドなどの認知を高める目的で広告出稿を行う場合があります。
このようなケースでは、どれだけの人の目に留まったか、広告に対してどのようなアクションがあったかなどを測定する指標をKPIとして設定します。
広告出稿に認知を高める目的がある場合には、imp、CPM、Reach、FQなどの指標をKPIに設定するとよいです。
それぞれ下記のような意味があります。
- imp(インプレッション数):広告が表示された回数
- CPM(インプレッション単価):広告を1,000回表示するためにかかったコスト
- Reach(リーチ):広告が表示されたユーザーの数
- FQ(フリークエンシー):ユーザーが広告に接触した回数
誘導を促すためのKPI指標
表示された広告に対しユーザーがどのような反応をしたか、どれくらい広告先へ誘致できたかなどをKPIの指標とするケースもあります。とくにオウンドメディアやWebサイトなどを運営している場合には、クリック数やクリック単価を指標とします。
- CT(クリック数):Web広告がクリックされた数
- CTR(クリック率):1クリックあたりの広告費
- CPC(クリック単価):1クリックあたりの広告費
コンバージョンを得るためのKPI指標
コンバージョンを得るための指標はKGIに直結することが多いため、積極的にKPIに設定することの多い指標です。会員登録やホワイトペーパーのダウンロードを促す広告の効果測定を目指す場合などに適した指標です。クリエイティブやLPの改善の目安にもなります。
- CV(コンバージョン):広告の目標となる成果に至った数
- CVR(コンバージョン率):広告をクリックしてコンバージョンに至った割合
コストや広告費の費用対効果に関するKPI指標
広告を運用する上で重要なのが、費用対効果を計測するKPI指標です。広告費の最適化や、広告費の見直しを検討する際にも必要な指標となります。
費用対効果を測る指標として、「CPA」「CPO」「ROI」「ROAS」
かけているコストや広告費の見直しや改善などを目的とする場合の指標として
簡単に説明する
- CPA(顧客獲得単価):1コンバージョンにかかった広告費
- CPO(注文獲得単価):1件の注文を獲得するためにかかった広告費
- ROAS(広告費用対効果):広告費1円あたりで得られた売上
- ROI(投資収益率・費用対効果):投資したコストに対して得られた利益
コストに関する指標はそれぞれが混同されやすくわかりにくい部分もあります。ここで紹介した広告費の費用対効果などに関する指標について、もう少し掘り下げて解説します。
CPA(Cost per Action / Acquisition)
CPAはコンバージョン単価とも呼ばれ、1件の成果(コンバージョン)を獲得するためにかかる広告費(コスト)のことです。
以下の式のいずれかで計算できます。
CPA = 広告費(コスト)÷ 成果(コンバージョン)数
CPA = クリック単価(CPC)÷ コンバージョン率(CVR)
CPAの特性 – 広告サービス上の情報だけで計算できる
CPAは、1件の成果(コンバージョン)に対して広告費(コスト)がいくらかかったのかを表す指標のため、顧客(広告主)のビジネスに依らず、広告のパフォーマンスを測ることができます。
また、広告サービス上のデータのみから計算できるため、顧客へのヒアリング等が不要であり、広告事業者にとっては手軽に使いやすい指標であると言えます。
一方、顧客のビジネスに寄り添う上では、CPAだけを見ていては見落とすこともあります。例えば、「原価を考慮した時、この広告キャンペーンは損益分岐点を超えているのか?」といった質問をされた時、CPAベースでは議論がしづらく、後述するROIを用いるのが適切と言えます。
CPAをKPIに設定する際の考え方
CPAは1つのコンバージョンに対して、どれくらいの広告費がかかっているのかを測る指標です。このような指標は問い合わせや資料請求など、コンバージョン自体に売上が発生しないケースや、商品価格が一律料金の場合などに有効です。
CPAの値が低いほど、広告運用がうまくいっていることを示します。かけている広告費の総額に関係なく、CPAが低ければ効率よく広告運用ができていると言えるでしょう。
CPAについては、以下の記事でもご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみて下さい。
CPO(Cost Per Order)
CPOは注文獲得単価とも呼ばれ、新規顧客から1件の受注を獲得するためにかかった広告費を示す指標です。さまざまなコンバージョンを含むCPAとは異なり、CPOは受注(売上の立つコンバージョン)が対象となります。
CPOの計算式は下記の通りです。
CPO = 広告費(コスト)÷ 受注件数
たとえば広告費を10万円使って10件の受注に繋がった場合、コスト・パー・オーダーは1万円となります。
CPOをKPIの指標とする際の考え方
CPOは新規顧客の受注にいくらの広告費がかかったかを知る以外にも、既存顧客を維持していく際、いくらの費用が必要となるのかを測る指標としても使われます。
受注1件に対するコストを算出する指標のため、実際広告を出稿してどれくらいの受注が発生しているのかを明確にすることが可能。
広告費をかけて多くの問い合わせや資料請求がきても、受注に繋がっていないのであれば広告費をムダにしてしまう場合もあります。CPOをKPI指標とすることで、さまざまな施策による費用対効果を測ることができるのです。
ROAS(Return on Advertising Spend)
ROASは、「広告費に対してどの程度の売上が上がっているか?」を表す数値です。
ROAS =(広告による売上 ÷ 広告費用)× 100%
たとえば1か月100万円の広告費をかけて広告キャンペーンを行い、広告経由の売上が200万円だったとします。この場合、ROASは200万円÷100万円×100%=200%となります。
ROASの特性 – 広告費用に対する売上が分かる
ROASの計算には「広告による売上」を知る必要があります。
そのため、顧客の販売している商品やサービスの平均的な売上額、すなわち「平均単価」を顧客からヒアリングした上で、以下の式を使うことが一般的です。
広告による売上 = 成果(コンバージョン)数 × 平均単価
広告費用については、広告サービス上で確認できます。
このようにして求められたROASの値は、顧客のビジネスに対する広告の費用対効果を表す数値となります。
もしROASが100%を超えているならば、広告費を上回る売上が上がっていることが分かります。
ROASをKPIの指標とする際の考え方
ROASは、広告費に対して得られた売上金額の割合を示す指標です。ECサイトなどのようにWeb上で売上が発生して完結する業態や、コンバージョンの価値が異なる製品を扱う際のKPIに適しています。
広告費の回収率や1円当たりの売上額を算出したい場合や、広告施策の費用対効果を知りたい場合にも、広告費が最適化できているかどうかを測ることができます。ROASの回収率は「100%」を基準として考え、高くなるほど費用対効果が高いと判断します。
ただしROASには仕入れや原価・経費などが考慮されていないため、100%以上でも赤字となるケースもあります。ROASをKPIに設定する場合には粗利を意識した「目標ROAS」を設定し、「利益が出る下限のライン」と「余裕を持って利益が出せるROAS」の2通りの目標値を設定しましょう。
目標ROAS=平均顧客単価 ÷ 粗利 × 100
ROASについては、以下の記事でもご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみて下さい。
ROI(Return on Investment)
ROIは一般的に投資の費用対効果を測る指標で、「投資額に対してどれくらい利益を得られるか?」を表す数値です。
広告の場合、以下の式によって定義されることが一般的です。
ROI =((広告による売上 – 売上原価)÷ 広告費用)× 100%
ROIの特性 – 広告費用に対する利益が分かる
ROIの式の分子にある「広告による売上 – 売上原価」という値は、広告費用を無視した時の顧客の利益を表します。
もしも「広告による売上 – 売上原価 < 広告費用」であるならば、顧客は利益を上回る広告費用を投じていることになり、ビジネス全体で見ると赤字です。この場合、ROIの値は100%を下回ります。
逆に「広告による売上 – 売上原価 > 広告費用」であるならば、広告費用を上回る利益が出ているため、広告が単体で収益化できているということになります。この時、ROIの値は100%を上回ります。
「広告による売上 – 売上原価 = 広告費用」の時は「利益と費用が釣り合っている」状態で、この時ROIはちょうど100%になります。
広告の損益分岐点(Break-Even Point)
損益分岐点とは、売上高と費用がちょうど等しくなる状態を指します。
実は、ROIが100%の時の条件式「広告による売上 – 売上原価 = 広告費用」こそ、損益分岐点の定義そのものなのです。
「広告が損益分岐点を超えているかどうか」を確かめるには、「広告のROIが100%を上回っているかどうか」を見ればいいのです。
このことから、ROIを使った広告効果測定は、広告を経由したビジネス全体の評価に向いていると言われています。
ROIをKPIの指標とする際の考え方
ROIは使ったお金(投資)に対して、どの程度の利益がでているかを測る指標です。投資費用に対する利益の確認や達成度評価が行えるため、マーケティング全般で活用されています。
広告費に見合う利益が出せているかどうかもROIで算出できるため、広告の運用効果も判断しやすくなります。リスティング広告やディスプレイ広告、それぞれ異なるチャネルなど、条件に応じてROIで求めることで、個別に投資利益率の良し悪しを測ることもできます。
ROIとROASの違い
ROASとROIはどちらも費用対効果を測る指標のため混同されがちです。しかしROIは投じた広告費に対してどれだけ「利益」が得られたのかを表す指標であり、ROASはどれだけの「売上」が上がったのかを表す指標です。
どんなに売上が上がっても利益が残らなければ困るため、ROIを優先的に活用しているという企業が多いです。しかしROASもざっくりとした費用対効果を測るのに適しているため、予算の掛け方の見極めや判断を行う上で必要な指標でもあります。
どちらかが優れているということではなく、「売り上げ目線」か「利益目線」で使い分けることが重要です。
目的に適したKPIの設定や効果測定が重要
広告に対するKPIは、あくまでもKGIに合わせて設定することが大切です。どれかひとつの指標に絞るのではなく、目的や施策などを踏まえ、それに適した指標を活用するようにしましょう。
当社ではBtoC、BtoB問わずさまざまな業態に応じた、広告運用コンサルティングをおこなっています。広告プランニングから適切なKPIの設定、広告出稿後の効果測定や分析、そして改善などのトータルサポートが可能です。
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