【2021年8月施行】薬機法改正で何が変わった?広告表現で気をつけたいこと
2021年8月1日より、薬機法改正に伴う新制度が施行されました。
中でも薬機法として初めて導入された『課徴金制度』の対象は虚偽・誇大広告となることから、広告業界に関わる人たちが特に注目している法改正とも言えるでしょう。
景品表示法では既に導入されている課徴金制度ですが、薬機法での案件の方が算定率が高く、高額な違反金を課せられるケースも想定されるため特に注意が必要です。
この記事では改正薬機法の課徴金制度を中心に違反行為を防ぐために必要なポイントを、改正薬機法の条文も交えながらご紹介していきます。
2021年8月から課徴金制度がスタート
薬機法ではこれまで、虚偽・誇大広告に違反した場合の罰金の水準は最高でも200万円(個人、法人共に)以下の金額となっていました。違法行為で不当な利益を得た企業にとって200万円の罰金というのはあまりに軽いもので、罰則として抑止効果が働いていないとの意見も多くあったようです。実際に薬機法の違反案件が減少していないといった状況もあり、課徴金制度の導入につながったと言われています。
課徴金制度を細かく確認していくと、他法律における同制度とは算定方式や除外規定など異なる点もいくつかあります。これは医薬品業界の内情をふまえた結果であり、また、違法行為が消費者の健康や生命に与える影響の大きさを考慮して検討を重ねられた救済措置が反映された制度になっていることが分かります。
課徴金(かちょうきん)とは・・・
課徴金(かちょうきん)とは、違反事業者に対して課される金銭的不利益(賦課金)のこと。すべて法律(独占禁止法、景品表示法、金融商品取引法、公認会計士法など)や国会の議決に基き定められています。
法令違反行為が認められた場合に納付を命じられるもので、違反事業者に対して金銭的不利益を与えることで行政が適切な対応を行ったり、規制の実効性を高めるなどの狙いがあります。今回の薬機法改正では、初めて課徴金制度が導入されることとなりました。
薬機法と景表法で変わる課徴金制度
課徴金制度は景品表示法でも既に導入されていますが、薬機法での課徴金制度は景品表示法のものより厳しい印象があります。主な違いを把握し、早めの対策を講じましょう。
薬機法と景表法の課徴金、3つの主な相違点
課徴金命令の際に事業者側にとって特に差が出る部分を3つにまとめました。
1.課徴金額の算定率が違う
景品表示法では売上額の3%であるのに対し、薬機法の場合には4.5%での算出となります。
2.主観的要素(故意、過失)の認定制度がない
景品表示法の場合、違反事業者が相当の注意を怠った者でないと認められるときには課徴金を課せられないケースもありますが、薬機法の場合には故意・過失がない場合でも課徴金命令を免除されることはありません。
3.自主返金による減免制度が無い
景品表示法の場合、課徴金納付命令を下されるまでに被害者へ自主返金をした場合には課徴金が免除される仕組みがあり、自主返金額が課徴金額(全額)に満たない場合でも減免されます。これに対し薬機法では自主返金額を考慮した課徴金の免除・減免制度はありません。
薬機法と景表法の違い、まとめ
以上の3項目は、課徴金命令の際に事業者側にとって特に差が出る部分だと思われますが、この3項目を含め制度の比較について表ににまとめてみました。
薬機法と景表法の取締り及び罰則に関する対応の違い
薬機法 | 景表法 | |
---|---|---|
管轄 | 厚生労働省、都道府県 | 消費者庁、公正取引委員会、都道府県 |
取り締まりの目的 | 医薬品等の品質や有効性、及び安全性の確保のため | 消費者の自主的かつ合理的な商品・サービスの選択の確保のため |
違反時の指導や処罰 | 行政指導、刑事処罰、課徴金支払い命令 | 措置命令、課徴金支払い命令 |
罰則の例 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方 | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方 |
薬機法と景表法の課徴金制度の違い
薬機法 | 景表法 | |
対象者 | 何人も | 当該商品・サービスを供給している事業者 |
対象となる行為 | 医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大な広告 | 事業者によるあらゆる商品・サービスの不当表示(優良誤認表示、有利誤認表示) |
対象期間 | 違反行為を行った期間 +6カ月~3年 |
違反行為を行った期間 +6カ月~3年 |
課徴金額 | 違反行為に関わる商品の 売上額に対して4.5% |
違反行為に関わる商品・サービスの売上額に対して3% |
免除に関する基準 | 課徴金額225万円未満(売上5,000万円未満)の場合には納付命令が免除される。
違反行為の発覚前での自主的な報告で課徴金額の50%を減額される。 消費者への自主返金による減免制度なし。 |
課徴金額150万円未満(売上5,000万円未満)の場合には納付命令が免除される。
違反行為を自主申告した事業者に対して、課徴金額の50%を減額される。 消費者への自主返金による減免制度あり。 |
薬機法や景品表示法については、こちらの記事でもご紹介していますので、是非参考にしてみて下さい。
課徴金納付命令の対象は「虚偽・誇大広告」
製造・流通・販売後の安全確保等、医薬品等を取り巻くさまざまなシーンで薬機法違反行為は起こり得ますが、今回の法改正による課徴金納付命令の対象は、虚偽・誇大広告のみに限定されているのが特徴です。
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
(薬機法)第六十六条 ※抜粋
条文のポイント 名称・製造方法・効能・効果又は性能などに関する虚偽・誇大広告が対象とされており、明示的・暗示的に関わらず虚偽又は誇大な記事を広告することや、記述、流布することが禁じられています。
対象となる商品は「人や動物の身体・機能に影響を及ぼす物」
薬機法では主に、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品・再生医療等の製品が規制対象となります。具体的には、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されたり、人や動物の身体構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている物などを指します。
健康食品やサプリメントなどは本来、薬機法の対象とされていないのですが、医薬品と同じような効能効果を訴求していたとすれば薬機法に抵触するおそれがあります。雑貨品を医療機器のように訴求していても同様です。薬機法違反行為を行えば課徴金の対象となり得ますので、食品だから(雑貨だから)大丈夫だと安易に考えてはいけません。
特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品についても同様で、それぞれに認められた効果や、あらかじめ届出をしている機能性を超えた内容での表示や広告を行うことはできませんので、広告を実施する際には表現できる範囲を確認しながら慎重に進めていきましょう。
薬機法の対象として誤解されやすい業態の例として、エステサロンや脱毛サロン、マッサージ店があります。この分野の広告では商品の機能というより施術やサービスになることが一般的だと思われます。
サービスや役務提供に関する広告表現の問題は薬機法で考えるのではなく、景品表示法や医療法の規制に抵触していないかどうか確認することがポイントとなります。例外として、サロンや店舗で化粧品や健康食品などを販売している場合には、薬機法の対象になりますので、宣伝・広告・販売方法などには注意が必要です。
対象となるのは「何人も」
原則として、何人も(どんな人でも、誰でも)薬機法規制の対象となります。
ただし、課徴金納付命令は(虚偽・誇大広告を展開した上での)取引で得た売上金をもとに算出された額を事業者に課するものですので、直接的に納付命令を受けるのは製造販売業者・卸売販売業者・販売業者等になるものと思われます(広告事業者や代理店が主導権を握っていた場合の賠償責任などは、個別事情となりますのでここでは触れません)。
尚、新聞や雑誌社・放送事業者・ネット媒体の広告事業者や広告代理店などが課徴金納付命令を受けないとは言え、『何人も』薬機法の措置命令の対象になり得ることを忘れてはなりません。
対象となる広告(媒体)は「全て」
新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、Webサイト、SNSなどすべての媒体の広告が対象となります。また『媒体』とは少々異なりますが、チラシやDM、店頭のPOPといった販促物なども基本的にはすべて広告と見なされますので、一般消費者に商品を販売するための情報発信には常に注意を払っておく必要があるでしょう。
課徴金納付命令の対象外や減免されるケース
虚偽・誇大広告で薬機法違反とされた全ての案件に課徴金納付命令が出されるわけではなく、免除や減額される場合もあります。条文と共に確認していきましょう。
第一項の規定にかかわらず、厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、課徴金対象行為者に対して同項の課徴金を納付することを命じないことができる。
(薬機法)第75条5の2 第3項
① 第七十二条の四第一項又は第七十二条の五第一項の命令をする場合(保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限る。)
② 第七十五条第一項又は第七十五条の二第一項の処分をする場合
条文のポイント 保険衛生上の危害の発生や拡大に与える影響が軽微である場合、事業者としての登録や許可が取り消される場合には、課徴金の納付命令が出されないケースもあると規定されています。
第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない。
(薬機法)第75条5の2 第4項
条文のポイント 課徴金が225万円以下の場合(対象品目の売上が5000万円未満の場合)には、納付命令の対象外となると規定されています。
前条第一項の場合において、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為について、当該課徴金対象行為者に対し、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第八条第一項の規定による命令があるとき、又は同法第十一条の規定により課徴金の納付を命じないものとされるときは、対価合計額に百分の三を乗じて得た額を当該課徴金の額から減額するものとする。
(薬機法)第75条5の3
条文のポイント 景品表示法上の課徴金と重複する額については減額されると規定されています。同一の事案において景品表示法による課徴金(売上額の3%)の納付が命じられている場合、その分を控除し薬機法による課徴金としては売上額の1.5%が課せられます。
第七十五条の五の二第一項又は前条の場合において、厚生労働大臣は、課徴金対象行為者が課徴金対象行為に該当する事実を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告したときは、同項又は同条の規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を当該課徴金の額から減額するものとする。ただし、その報告が、当該課徴金対象行為についての調査があつたことにより当該課徴金対象行為について同項の規定による命令(以下「課徴金納付命令」という。)があるべきことを予知してされたものであるときは、この限りでない。
(薬機法)第75条5の4
条文のポイント 薬機法違反行為の発覚前(調査が入る前)、その事実を自主的に厚生労働省の定めた方法で報告した場合には、課徴金額の50%減額が規定されています。
課徴金の算出方法と納付命令が出されるまで
課徴金額の算出方法
違反を行っていた期間中における対象商品の売上額 ×4.5% と定められています。
課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額に100分の4.5を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
(改正薬機法)第75条5の2 第1項
では実際、どのように金額を算出されるのか説明していきます。
『違反を行っていた期間』とは、
1、課徴金対象行為(虚偽・誇大広告等)をした期間 + 2、課徴金対象行為(虚偽・誇大広告等)をやめた日から(a)6か月を経過する日、又は、(b)「当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置」をとった日のいずれか早い日までの間に課徴金対象行為に係る取引をした場合には、最後に取引をした日とされています。
この期間が3年を超える場合には、最長でも3年間として算出されますので、直近3年間の売上が対象になり得るということになります。
また、違反行為の時効は、最後に課徴金対象行為をした日から5年とされています。
『違反を行っていた期間』=『虚偽・誇大広告の掲載期間』と考える方もいらっしゃると思いますが、『課徴金対象期間』と『広告掲載期間』とは異なります。一般的には、広告掲載を止めてもすぐに訴求効果が消滅するものではないと考えられていますので、その期間を加えた上で課徴金が算出される仕組みとなっています。
行政処分の流れ
納付命令はいきなり出されるわけではありません。行政指導や措置命令を経て、課徴金納付命令に該当する事案かどうかを判断されるのですが、その間に調査を受けたり、事情説明する機会を与えられたりもします。
この流れを知っておけば、第三者からの指摘を受けたり、自らミスを認識した段階で早めに情報を集めたり、専門機関に相談するなど準備に時間を割くこともできるでしょう。
広告表現などで注意するポイント
薬機法における虚偽・誇大広告を調べてみると、商材の種類や分類によって違反広告となりやすい表現も変わってくることがわかります。
商材の種類とは一般的に、医薬品、医療機器、化粧品、健康食品、雑貨などと呼ばれている各ジャンルを指しますが、単に化粧品と言っても『薬用化粧品』と定義されるものもあるため、それぞれの分類に見合った広告表現が必要となるのです。
化粧品広告の注意点
まず最初に、化粧品広告で見られる違反表現をご紹介したいのですが、その前に、化粧品で広告・表示できる効能効果に関する基本をご説明したいと思います。
現在化粧品として広告・表示できる効能効果は、下図の通り56項目あります。このいずれか(複数もあり)の商品として製造され、包装なども規定を守り、販売されているのです。ですから広告表現を考える前にまず、商品がどの項目に該当するのか確認すること、そして定められた効能効果の範囲内で消費者を惹きつける広告表現を探す必要があるのです。
化粧品の効能効果の範囲
※平成12年12月28日付け 医薬発第1339号 厚生省医薬安全局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」、平成23年7月21日付け 厚生労働省医薬食品局審査監理課長及び厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知 「化粧品の効能の範囲の改正について」より
例えば「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」という表現が認められる化粧品の広告で、「悩んでいたシミが消えました!」というフレーズは使えないということです。「防ぐ」と「消える」や「薄くなる」のでは意味が違いますよね。更に補足すると、「10年来のシミも、1カ月で・・・?!」のように結論をぼかしてみたり文末を「?」にしてみても、一般消費者に「シミが消える」と感じさせれば薬機法違反の広告となり得ます。ですから、消費者に誤認を与える暗示表現も避けておかなくてはなりません。
シミの表現はあくまでも一例ですが、措置命令のニュースなどで虚偽・誇大広告の事例を目にする機会も増えていますので、その際には商品情報と広告表現を照らし合わせてみると、範囲内で表現するという意味やボーダーラインが理解できるようになると思います。
ネットでよく見かける違反広告のリスクが高い表現の例
- 「地肌に優しいシャンプーで白髪がなくなります」
- 「ノーベル賞成分入りで、3日でシミがポロっと」
- 「確実にシミが取れます!」
- 「1週間でほうれい線とサヨナラ」
- 「毛穴の汚れという汚れが1回でごっそり」
- 「首元のポツポツがすぐ消えた!」
- 「抜け毛を完全ストップできると噂のシャンプー」
- 「寝る前のうがいだけ!真っ白な歯に変身できるマウスウォッシュ」
どの表現も化粧品の効能を逸脱しており、効果が過剰に強調されている印象を受けます。
もし商品の愛用者からこんな感想が届いても、そのまま広告で紹介したり、商品説明として効能効果であるかのように利用することはできないと覚えておきましょう。
※違反広告の判断において、商品説明や体験談など使用箇所は考慮されません。
医薬部外品広告の注意点
次に、医薬部外品の主な分類とそれぞれに認められた効能・効果をご説明します。
医薬部外品の効能又は効果の範囲 ※1 (抜粋)
※1 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」より抜粋
医薬部外品は一般化粧品に比べ製造や販売などの規制が厳しい代わりに、一定の効能効果を訴求できるといった特徴があります。使用箇所(身体部位)が一般化粧品と変わらないため消費者には違いが分かりにくい面もあり、そこに誤認や違反表現が生まれやすいので気をつけましょう。
例えば体臭の気になる人がドラッグストアに行き、化粧品(分類)の汗用スプレーと医薬部外品の制汗剤を前に迷っているとします。ここで両商品に『夏の汗と臭いを抑える!』というフレーズの店頭広告がつけられていたらどうでしょうか。同じ効果があるものと見なし、別の要素で商品を選択することになります。それが『誤認を与える』広告であり、薬機法違反と見なされるおそれがあるということなのです。
補足ですが、化粧品の汗用スプレーでは『(38)芳香を与える』と訴求でき、医薬部外品の制汗剤なら『わきが、皮膚汗臭を防ぐ』と広告できます。これを知らずにターゲットや商品の形状が似ているというだけで競合他社と同じような広告を展開したら薬機法違反とされた・・・なんて事態にもなりかねません。
このように広告制作者が陥りやすい事例としては他にも、薬用シャンプーに頭皮の汚れを優しく除去する成分が含まれているからと言って『育毛シャンプー』と広告したら問題になってしまった・・・などというのも、この商品分類と大いに関係があります。
分類(医薬品、医薬部外品、化粧品)により広告可能な表現が変わる例
- 「発毛」「育毛」「かゆみを防ぐ」「頭皮環境を整える」
- 「日焼けによるシミ・ソバカスを防ぐ」「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」
- 「白髪染め」「ヘアカラートリートメント」
- (洗顔料以外で)「ニキビを防ぐ」「肌荒れを防ぐ」
- 「シワを改善する」「乾燥による小じわを目立たなくする」「ファンデーションでシワを隠す」
- 「歯茎の腫れに」「歯周病予防」「お口スッキリ」 など
また、薬用化粧品(化粧品的な使用をされる医薬部外品)については、含有成分や分量など事前に審査・承認を受けたものとなります。下表Aは、その中でも一般的な分類と効能・効果についてまとめられたものです。商品が承認を受けた範囲内で効能効果について標ぼうしなくてはならないことに注意しましょう。
〔表A〕 薬用化粧品の効能又は効果の範囲
厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」より抜粋
※関連法令等 「薬用化粧品の効能又は効果について」(平成19年12月21日 事務連絡 厚生労働省医薬食品局審査管理課)
課徴金の対象となる薬機法違反を防ぐための基本は、広告しようとしている商品が持つ効能効果は何かを正しく把握した上で、その範囲を超えた表現を行わないことです。
薬機法というと難しい印象を持たれがちですし、特に医薬部外品や化粧品についてはルールが多く扱いづらい面もありますが、都度、厚労省や行政の情報を確認するなど基本動作をシンプルに実践することこそ違反防止につながるのだと思います。
健康食品・サプリメント広告の注意点
最後に食品の広告表現について説明します。
薬機法において食品は対象外だと思う方もいるかもしれませんが、残念ながら薬機法違反となるケースがあります。それは、表示や広告において医薬品的な効能効果を標ぼうしている場合です。軽く「健康に良い」と示すものから「ガンに効く」とアピールするものまで、世の中ではたくさんの表現を目にしますが、根拠がなかったり過度な誇張で消費者を誤認させる広告や表示は薬機法違反とされ、虚偽・誇大広告と認定されれば課徴金の支払いを命じられることも他の商材と変わりありません。
特に注意が必要な表現について、タイプ別に文例を交えてご紹介したいと思います。
健康食品・サプリメント広告で注意が必要な例
1、疾病の治癒又は予防を目的とする効能効果の例
「生活習慣病の予防」「便秘が治る」「ガンに効く」「動脈硬化を防ぐ」
2、身体の組織機能の一般的増強、増進を目的とする効能効果の例
「疲労回復」「新陳代謝を高める」「老化防止」「体力増強」「免疫力アップ」
3、医薬品的な効能効果(暗示)の例
「便秘気味の方に」「体質改善」「中国で古来より肝臓の薬として愛されてきた」
「この成分はガンに効果があると学会で発表されました」「血圧に問題を抱えている人向けの」
これらはすべて薬機法違反のおそれがある広告表現の例となります。前項では、化粧品が薬用化粧品にしか認められていない効能効果を述べれば問題になると説明しましたが、食品についても同様で、医薬品や医療機器等の領域となる効能効果に触れることはできないのです。
まとめ
改正薬機法でターゲットとされている虚偽・誇大広告。この違反行為を防ぐために必要なことは、特別なテクニックではありません。
「何人も」対象となる薬機法に対して当事者意識を持って学ぶこと、そして世の中で発信される違反事例やニュースをいつも気に掛け、最新情報にアップデートし続けることが最大の防御となります。ご自身の仕事内容や状況に応じたスタイルで薬機法と向き合いながら、効果とコンプライアンスを両立できる広告表現を見出していきましょう。
広告表現の概論については、こちらの記事でもご紹介しています。
■参考資料(外部サイトへ移動します)
- 厚生労働省『薬機法の一部改正について』
- 厚生労働省『化粧品の効能の範囲の改正について』(平成23年7月 通知)
- 厚生労働省『薬事法第二条第二項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品(平成21年2月6日厚生労働省告示第25号)』
※医薬品等広告講習会(令和2年度)の資料や法令・通知など