レコメンドエンジンとは?基本的な仕組みと主な機能6種類を紹介
Webサイトで商品の購入、サービスの申し込みを増やすためのツールにレコメンドエンジンがあります。活用方法やメリットだけでなく、選び方についても詳しく解説します。
レコメンドエンジンとは何か?
レコメンドエンジンとは、英語のrecommendに由来し、言葉の意味は「おすすめする」「推薦する」という意味です。
Webサイトにおけるレコメンドエンジンは、一定のルールや行動データに基づいてユーザーに適したおすすめ商品やコンテンツを表示するツールとして使われます。
端的に言えば、購買行動における体験を向上させ、購入単価や顧客単価を上げることを目的としています。
例えばWebサイトの閲覧履歴や検索履歴、購入履歴などの様々な情報を元にして、Webサイトの訪問者ごとに適した商品やサービスを紹介するコンテンツを自動で表示、推薦します。
更には購入確率の向上やページ閲覧数の増加も図ることができるのがレコメンドエンジンなのです。
レコメンドエンジンは主にECサイト(例えばAmazonなど)で使われていますが、その機能性を活かすべくニュースサイトなどのポータルサイト(例えばYahoo!など)でも多様な記事をおすすめする際にも使われている仕組みです。
また、レコメンドエンジンは上記のようなメリットがサイト運営側だけにあるだけでなく、サイト訪問者側にもメリットがあります。
訪問者側にとっては気になっているものや便利と思える可能性が高い商品やサービス、コンテンツに出会いやすいことはメリットです。
新しい発見や思いがけない商品との出会いの機会も増やすこと、これも訪問者にとってはメリットだと言えるでしょう。
レコメンドエンジンの主な機能
更にレコメンドエンジンの多くは、関連する商品やサービスを薦める機能だけでなく、以下のような機能を有しているものもあります。
データベース機能
訪問者の行動履歴をデータとして蓄積・分析する機能です。サイト内で訪問者がどのように行動したかを「行動履歴データ」として残し、また、どの商品・サービスをチェックしたのかを「閲覧履歴データ」として残す機能があります。
メッセージ機能
訪問者の興味や関心に合う商品・サービスの情報をメッセージとして送信、表示する機能です。配信できる内容は訪問者の行動履歴を元にした商品だけでなく売れている商品などをおすすめとして送信、表示することも可能です。
ABテスト機能
レコメンド表示する商品やコンテンツページのパターンを分けて配信する(AパターンとBパターンに分ける)ことで、より高い効果が出るほうを優先的に表示する機能です。どちらが効果的であるのか分かりやすい機能なので、コンテンツの改善にも活かせる機能です。
レコメンド機能
前述したように、一定のルールや行動データに基づいてユーザーに適したおすすめ商品やコンテンツを表示します。購買行動における体験を向上させ、購入単価や顧客単価を上げることが期待できる機能です。
ランキング機能
ECサイトでは閲覧数が多い商品やたくさん売れている商品をランキング形式で表示します。Webサイトの閲覧数が多いコンテンツページを表示する際などにも使われる機能です。
リマインド機能
ユーザーが閲覧したことのある商品やコンテンツページを紹介する機能です。例えばECサイトであれば、ショッピングカートに入れたまま購入されていない商品を紹介することで、買い忘れた商品を思い出してもらうことができるので購入に繋がりやすいです。
レコメンドエンジンの基本的な仕組み
レコメンドエンジンは上記のように多くの機能を有していますが、ベースとなる技術はいくつかの種類があり、単体だけでなく組み合わせることでも様々な機能を実現しています。
ここではレコメンドエンジンの基本的な仕組み、ロジックの種類を紹介します。
1.協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、訪問者のアクセス履歴や購入した商品の種類などに基づいてレコメンド表示を行うレコメンドエンジンです。訪問者の情報に基づいて行うため、主に行動履歴や購入履歴が基データとして使われます。
協調フィルタリングを使うことで、訪問者の趣味趣向に沿ったレコメンド表示となり、より訪問者のニーズに適した提案を行えます。
ただし、協調フィルタリングは行動履歴や購入履歴を基にするので、データベースに蓄積されているデータが少ない場合には、効果的なレコメンドが行われにくいという問題があります(これを「コールドスタート」と呼びます)。
また、新規の訪問者も最初は検索や購入などのデータがないため、それらが蓄積するまでの間は適切なレコメンドが行われにくいこともあります。
2.コンテンツベース・フィルタリング
コンテンツベース・フィルタリングとは、商品情報の属性と訪問者の行動に着目してレコメンド表示を行うレコメンドエンジンです。事前に商品情報をグループ化しておいて、訪問者がどのグループの商品を選んだかをデータとして蓄積していくことで、同じグループに分類されている商品を訪問者にレコメンド表示します。
ただし、一度設定した情報に基づいたレコメンド表示が継続的に行われるので設定の変更を行わない限りは同じグループの商品をレコメンド表示し続けることにもなり、訪問者にとっては予想外の商品・サービスには出会いにくくなるという欠点があります。
3.ハイブリッド・タイプ
ハイブリッド・タイプとは、先に紹介した協調フィルタリングとコンテンツベース・フィルタリングの2つを組み合わせてレコメンド表示を行うレコメンドエンジンです。特定の組み合わせを指すものではなく、異なる2つの種類を組み合わせた場合でもハイブリッド・タイプと呼びます。
組み合わせたそれぞれの種類のデメリットを解消することを目的に使用されるレコメンドエンジンです。様々な切り口からレコメンド表示させたい場合はハイブリッド・タイプを選ぶとよいでしょう。
このようにレコメンドエンジンには様々な種類がありますので、レコメンドエンジンを使ってはいるが、思うように商品の購入やサービスの申し込みが増えない場合、レコメンドエンジンの種類を変えることを検討してみましょう。
レコメンドエンジンのメリット・デメリット
これまでの説明からも分かるように、レコメンドエンジンを導入すれば多くのメリットを享受することができますが、残念ながらデメリットとなることもあります。
ここではレコメンドエンジンのメリット、デメリットについて詳しく解説します。
メリット
1.ユーザー体験の向上
レコメンドエンジンによって訪問者の興味や関心のある商品やコンテンツを提示することによって、Webサイトのユーザー体験の向上につながります。
ユーザー体験が向上するということは訪問者にとっては利便性の高いWebサイトでもあるので利用頻度(ページ閲覧数)が増え、合わせてWebサイト内の滞在時間も増えることになります。
2.売上の向上
レコメンドエンジンによって訪問者の顕在意識にある商品やコンテンツだけでなく、それに関係する商品やコンテンツ、まだ潜在意識でしかなかった商品やコンテンツをおすすめすることで追加購入を促しやすくなり、引いては購入の確率が上がるため売上アップが期待できます。
3.リピーターの獲得
上記2つのメリットが生まれることによって、集客数の維持、特にリピーターの獲得が期待できます。
もちろん新規の訪問者を獲得することも重要ですが、Webサイトを長期的に運営していくにはリピーターを多く獲得することは欠かせません。
特にECサイトにおいては初めて利用するサイトよりも一度利用したサイトや知人からおすすめされたサイトを繰り返して利用する傾向が強いため、リピーターの獲得は、売上の維持、向上に必須と言えるでしょう。
デメリット
1.サイト開設当初や訪問者が少ないとレコメンド精度が低い
レコメンドエンジンは訪問者のアクセス履歴や購入した商品の種類などに基づいてレコメンド表示を行う特性上、訪問者が少ないうちはレコメンド表示の精度が上がらず、利用者の好みにあったレコメンド表示ができないことがあります。
また、WebサイトやECサイトを立ち上げたばかりでは訪問客が少ないため、訪問者のアクセス履歴や購入した商品の種類などのデータも蓄積されていないので同様のデメリットが起こり得ます。
これを防ぐには訪問者の行動パターンを予測して、事前にレコメンドの内容を設定することが必要になります。
2.レコメンド表示が向かない場合もある
商品数やコンテンツ数が少ない場合や、ある分野に特化している専門的なWebサイトの場合ではレコメンド表示される商品やコンテンツがかなり限られてしまうため、レコメンドエンジンのメリットが存分に活かせないことになりがちです。開設当初はレコメンド表示を行わず、データが蓄積されてからレコメンド表示を行うのも一つの方法です。
以上がレコメンドエンジンの代表的なメリット、デメリットです。
自身のWebサイトがレコメンドに向いているか、メリット、デメリットを把握した上でレコメンドエンジンを導入するかどうかを検討しましょう。
レコメンドエンジンの活用方法
レコメンドエンジンはECサイトやニュースサイトでよく使われていると前述しましたが、それ以外のWebサイト、例えば就転職の求人サイトや不動産やホテルの宿泊予約サイトなど幅広い業種やジャンルのWebサイトでも多く使われています。
ここではWebサイト別のレコメンドエンジンの活用方法について説明します。
1.ECサイト
レコメンドエンジンは多くのECサイトに導入されていて、代表的な例にAmazonや楽天などの大型ECサイトがあります。Amazonや楽天では会員情報はもちろん、サイト閲覧データや購買データ、商品データなど様々なデータを基にして更に掛けわせることで、それぞれの顧客の嗜好に適したおすすめ商品を自動で提示します。
これによって、顧客は自分の好みに合う商品をスムーズに見つけ、購入することができるため、売り上げの向上が望めます。
また、レコメンドエンジンは顧客のユーザー体験を向上させるだけでなく、自動的に稼働させることで運用コストを下げることも可能となり、管理者側の工数を削減できます。
そのため、レコメンドエンジンはECサイトにはうってつけであると言えます。
2.ニュースサイト(ポータルサイト)
訪問者の興味や関心の強い記事をレコメンド表示することで、閲覧ページ数の増加やサイト滞在時間を高める方法としても有用です。
ニュースサイトの訪問者は、見たい情報を多くの情報が溢れるサイトの中から探さなければならないことが多く、該当する記事を探せなくて離脱してしまう場合があります。また、該当する記事を見つけても、他の記事は読まずに離脱してしまう傾向もあります。
そんな訪問者の記事の閲覧数を伸ばしたり、滞在時間を増やす仕組みとしてレコメンドエンジンを使いましょう。
3.ECサイトやニュースサイト以外のWebサイト
就転職の求人サイトや不動産やホテルの宿泊予約サイトでもレコメンドエンジンが導入されています。
例えば、就転職の求人サイトなら、訪問者が閲覧している求人案件に似た案件を提示しておすすめすることができます。
他にも、ホテルの宿泊予約サイトなら、旅行先からレコメンド表示するのはもちろん、予算やサービス内容に合わせたホテルをレコメンド表示することができます。
こうした使い方をすることで、ホテル予約に繋がる可能性が高くなります。
特にECサイトや就転職の求人サイト、不動産やホテルの宿泊予約サイトは、一度だけでなく何度も訪問して利用することも多いため、リピーターになりやすいです。
それが会員情報や閲覧データを増やして更にレコメンドの精度がより高まるという好循環を生み出します。
レコメンドエンジンの選び方
レコメンドエンジンはとても優れたツールではありますが、レコメンドエンジンを内製して実装するには知識も技術も必要であり、開発、実装時間だけでなく金銭的なコストもかなり必要となります。
そのような場合は外部のレコメンドエンジンを導入するのも一つの方法です。
現在はレコメンドエンジンを提供するサービスは多数あり、欲しい機能を絞って選べば比較的安価で導入することもできます。
また、自身のWebサイトに合ったレコメンドエンジンを選んで契約するには重要視するべきポイントがいくつかあります。
レコメンドエンジンを選ぶ上で重要視するポイントは以下の通りです。
1.使いたい機能が備わっているか
レコメンドエンジンを選ぶに当たり、一番重要なポイントは、自身のWebサイトに使いたい、欲しい機能が備わっているかどうかです。なぜならば、レコメンドエンジンで実現できる機能はツールによって様々だからです。
まずは、選ぶ前にレコメンドエンジンを導入する目的を明確にしましょう。そうすればどんな機能が必要なのか、どういう機能を使いたいかも明確になります。
また、サービスによっては機能を後から追加できるケースもあります。それも含めて自身が使いたい機能が備わっているレコメンドツールなのかをしっかり確認して契約しましょう。
2.他サービスとの連携
レコメンドエンジンは他のサービスやツールと組み合わせて使用することも多く、他のサービスやツールと連携させるとより活用の範囲も広がります。
ECサイトで使われるショッピングカートツールはもちろん、MA(マーケティング・オートメーション)ツールやDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)などとも連携することが可能なレコメンドエンジンもあります。
契約するレコメンドエンジンが既に使っているツールや導入予定のあるツールと連携できるかどうかを確認したうえで選択、契約しましょう。
3.利用料金
レコメンドエンジンはアクセス数に対する従量課金制となっている場合が多く、それ以外にも初期費用や月額基本料金などがかかる場合もあります。
事前に課金方法を確認するのはもちろん、更に契約した場合、自身のWebサイトではどのくらいの従量課金が予想されるかをシミュレーションしておきましょう。
この3つの選び方のポイントは、レコメンドエンジンに限らず外部サービスを選択、利用する際のポイントでもあるので、必ずチェックするようにしましょう。
まとめ
このようにレコメンドエンジンは多くの種類や機能があり、様々なメリット・デメリットもあります。
導入を考えているならば活用方法だけでなく、選び方のポイントもしっかり確認しましょう。
また、最近のレコメンドエンジンツはAIや機械学習の進化に伴ってレコメンドで表示される商品のパターンは幅広くなり、よりユーザーが興味を持ちやすいレコメンドを作れるよう進化しています。
これを自社だけで内製、運用を含めて全てを実現するには多大なコストがかかるので、なるべく正確かつスピーディーに行うにはやはり専門業者のサービスなどを利用する、外部のチカラを借りるのも一つの方法です。