Webマーケティングで押さえたい景品表示法の基礎知識と注意点

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販促や広告のプランニングや実施にあたり、避けては通れない存在が景品表示法です。
「どこよりも注目を集めたい」「価値や魅力を強力に伝えたい」「もっと売りたい」といった思いが、法令違反のリスクにつながりやすいと考えられているためです。

故意・過失を問わず措置命令(そちめいれい:広告の取りやめ、再発防止の実施など)や課徴金(かちょうきん:罰金のような金銭負担)の納付を命じられた事例も珍しくなく、「法律は私の担当外です」では済まされない、それが景品表示法の厳しいところです。

手掛けた企画や広告が法令違反となれば、自身や取引先の時間やコストの負担だけでなく、企業イメージが損なわれたり、いつまでもネットに情報が残ってしまったりなど悪影響は計り知れません。

そうならないためにも、まずは基礎知識をしっかり押さえておきましょう。

景品表示法とは?初心者向け 景表法の基礎知識


景品表示法(景表法 ※正式名称『不当景品類及び不当表示防止法』)とは、過大な景品や不当な表示を規制し、消費者の利益を保護するために定められた法律です。利益を守る、とは金銭面の保護だけを指すのではなく、消費者自身が良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ることも目的とされています。

まず基本的な考え方として、景品表示法では BtoB(企業間)取引は対象外とされており、あくまでも一般消費者に対する「景品類」と「表示」が規制の対象となります。
一般消費者向けに発信される広告、商品への表示、商取引・契約上の景品類などを扱う場合には、知らずに進めてしまうとトラブルにつながることもあるため注意が必要です。

法規制で禁じられていることや基本ルールは「景品類」と「表示」で大きく異なりますので、以下で具体的な事例とともに説明していきます。

※景品表示法を管理しているのは消費者庁となります。実名を伴う措置命令情報や最新情報などは、消費者庁ホームページで開示されています。

景品類とは?景品の考え方と分類について

景品表示法上では、粗品・おまけ・賞品などを「景品類」としています。景品にもさまざまなイメージがあるかと思いますが、イベントで配布されるノベルティ、CMと連動したキャンペーンくじ、創業記念品などもそうですし、ゲーム内アイテムやイベントへの参加券など、これまでにない形や用途の景品が話題となることも増えています。
一般的な景品とは印象が異なる場合でも、景品類と見なされれば規制の対象となります。

これらの景品類に規制が設けられているのは、消費者が景品の過剰さや豪華さに惑わされて正しい判断ができなくなるのを防ぐためでもあります。景品類の最高額や総額には上限があり、提供する際にはその額を超えないようにしなければならないのです。

景品類の提供に対する条件の有無、取引を伴うか否かなどによって上限額は異なるため、企画段階からしっかり検討し、条件に見合った景品類を準備することが肝心なのです。

予算次第、反響ありきのキャンペーンでは、リスクを抱え込むことになるでしょう。

「オープン型」と「クローズ型」

ここでは簡単な説明にとどめますが、景品類の最高額や総額は提供方法・条件によって固定額となる場合と、個別に算出を必要とする場合があります。

懸賞・景品のスタイルや提供方法には、以下のような分類があります。

・オープン型 (商品購入やサービス利用、来店を条件とせずに誰でも応募可能)
 ⇒景品額の上限はありません。

・クローズ型 (商品購入やサービス利用など、応募者に一定の条件を求めるケース)
 ⇒さらに以下の分類に基づき、算出式や限度額が定められています。

 A:もれなく景品類を提供する「総付(そうづけ)景品
 B:くじ等の偶発性や特定行為の優劣等で景品類を提供する「一般懸賞
 C:複数の事業者が共同で景品類を提供する「共同懸賞

このような区分にもとづき、設定できる景品を検討する流れになります。
景品表示法違反のリスクを最小限に抑えるためには、提供したい景品のターゲット設定(全員、先着順、抽選、クイズ正解者に限定するなど)や条件設定(来店者、商品購入、サービス加入など)を明確にすることが第一歩です。

まずはこれらの用語やルールに慣れ、関係者とすり合わせるところから始めましょう。

表示とは?不当表示の考え方について

景品表示法で禁じられた「不当表示」とはどのようなものを指すのでしょうか。

まず「表示」についてですが、ネット広告、TVCM、ポスター・看板、チラシ・パンフレット、新聞や雑誌に掲載された広告はもちろん、商品パッケージ、店舗での実演販売、訪問や電話でのセールストークまで幅広く対象とされています。
少し意外ではありますが、音声による情報についても景品表示法上の「表示」として扱われるため、「文字に残らないから大丈夫だろうと考えるのは早計です。

不当な表示とは何か、シンプルに説明するならば「うそや大げさな表示など、消費者をだますような内容のもの」といったところでしょうか。
不当表示の中でも「優良誤認」と「有利誤認」と呼ばれる2つの分類とその具体例について、以下の項目で詳しく説明していきます。

「優良誤認」「有利誤認」とは? ポイントと実例を紹介

「不当表示」には、主に2つの分類があります。

・主に品質や規格などに対する不当な表示「優良誤認
・主に価格や取引条件などに対する不当な表示「有利誤認

この2つの分類以外にも、消費者に誤認されるおそれがある6種類の表示に関して内閣総理大臣の指定により禁止されているものがあります。
それぞれについて説明していきましょう。

優良誤認表示について

実際のものや事実に相違して「著しく優良である」と、一般消費者に誤認を与える表示のことを指します。

消費者庁から景品表示法違反の措置命令が出される際に「・・・・にもかかわらず、あたかも・・・・かのように表示していた」という表現を使われることが多いのですが、商品・サービスの実態とそれを説明する表示内容がかけ離れてしまわないよう、注意しなければなりません。

優良誤認表示の一例

実態表示
ブランド牛ではない国産牛肉国産の有名ブランド牛肉
10万km走行した中古車走行距離3万km程度の中古車
水道水を沸かしただけの入浴施設源泉かけ流しの天然温泉
商品を摂取しながら、食事制限と運動による痩身効果を実現したいつも通りの生活のまま、商品を摂取するだけで痩せられる
除菌効果の試験は行ったが、一般的な生活空間とは異なる条件であった商品を使用するだけで、身の回りの空間を除菌・ウイルス除去できる

 

これらはほんの一例ですが、意図的な虚偽だけでなく、仕入れ先の報告や管理に不備があったケース、客観的とは言えない調査の結果を引用する、自社に都合の良い比較をしてしまうなど不当表示が生まれる背景はさまざまです。

消費者庁が発信するニュースや違反事例をキャッチし、日頃から当事者意識を持つこと、迷ったら専門家に意見を求めることが大事です。

有利誤認表示について

商品・サービスの価格、数量、保証期間、アフターサービスなどの「取引条件」について、著しく有利に見せかける表示のことを指します。

有利誤認表示の一例

実態表示
同業他社の割引サービスを含んで比較した場合に、自社が最安ではない同業他社と比較して、自社サービスが最安である
競合他社の商品と同程度の内容量他社商品の2倍の内容量
競合店の平均価格を実際より高く設定した上で値引き(競合店より安くならない)競合店の平均価格から値引きする
歯列矯正サービスを受けるためには、別途、矯正装置の購入が必要(初診料や検査診断料として)記載された金額だけを支払えば矯正できる

他社との比較結果にもとづき有利性を断定・強調する場合には、客観的視点による正当な比較であることが前提となります。
競合他社が多数あり把握できていない、商品の性質が他社と異なる、比較調査の条件が異なる、などは正当な比較とみなされないおそれがあります。

上記の有利誤認表示とは異なる、不当な二重価格表示という規制にも注意が必要です。これは自社・同商品での価格を比較して、よりお得に見せかける手法となります。

二重価格表示の一例

実際表示
通常10,000円での販売実績はない当サイトで購入すると、通常10,000円の商品が半額の5,000円!

その他、誤解をまねくおそれがある表示とは

消費者から誤認される恐れがある以下6種類については内閣総理大臣から特に表示を指定して禁止されているため、取り扱う際には注意が必要です。

  • おとり広告に関する表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
  • 商品の原産国に関する不当な表示
  • 無果汁(果汁や果肉が5パーセント未満)の清涼飲料水等に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示
  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示

景品表示法違反とその背景:最近の事例について

不当表示行為の差し止めや再発防止策など、消費者庁や都道府県から措置命令を受けることになります。場合によっては、不正な表示で得た売上に応じた「課徴金」の納付を命じられることもあるため、「指摘されたら訂正すればいい」などと安易に考えてはなりません。
実際、億単位の課徴金を命じられた事例もあり、景品表示法違反が事業の存続を脅かす事態に発展することもあるのですから。

特にインターネット上での不当な表示による消費者トラブルは増加を続けており、消費者庁や各都道府県でのパトロールも強化されています。行政による対策の一方で、被害を受けた消費者自身がSNSで発信するなど、違反が明るみに出やすい状況は加速しています。
もし当事者になれば、ダメージが大きいことをしっかり認識しておきましょう。

景品表示法の違反事例には、時代を反映する流れや傾向が見られます。
同様のビジネスモデルや表示を扱う際には参考になりますので、最近のトピックスをご紹介します。

違法のリスク大!新型コロナウイルスの表示について

広告・宣伝効果を高めるために、と「新型コロナウイルス」を安易に使用することは非常に危険な行為です。

2020年3月には消費者庁から改善要請や注意喚起もありましたが、現段階において新型コロナウイルスの予防効果を標ぼうすることは、景品表示法だけでなく健康増進法の規定に違反するおそれが高いとのことです。
厚生労働省の管轄となりますが、薬機法に抵触するおそれについても同様です。

いわゆる健康食品・マイナスイオン発生器・空間除菌剤などの商材において違反表示が多く見られたようです。事業者の中には独自の判断材料や解釈となる情報を用意した上で表示を行っていたかもしれませんが、新型コロナウイルスについては未だ明らかになっていないことが多く、予防効果をうたえる客観的・合理的根拠に欠ける状況であると見なされているのです。

「予防」とは表現せず、例えば「対策」「効果的」「守る」など暗示的な内容であっても、消費者を誤認させるような表示は行わないようにしましょう。

薬機法については、こちらの記事でもご紹介していますので、是非参考にしてみて下さい。

措置命令が急増!期間限定キャンペーンについて

「今だけ割引」「特典は今月末まで」といったメリットを打ち出す広告があふれています。
お得感を強調しなければ競争に勝てない、物が売れない状況があるのかもしれません。
こうした背景の中、違反広告の取り締まりが増えているとも言われています。

景品表示法では有利誤認や虚偽表示が問題となることについて前項で述べましたが、「今買えばお得です」と見せかけて実際には異なる場合には有利誤認・虚偽表示と見なされる点に気を付ける必要があります。
違反で処分を受けないためには(お得ではない通常の)販売実態があると示せることキャンペーンが常態化していないことが原則です。
実際には細かいルールがあり、いつまでも割引を継続している、小手先の変更でごまかしていると判断されればアウトです。

たばこ販売事業者の処分では過去最高額の課徴金納付が命じられており、大手法律事務所による違反事件も話題となりました。限定の予定だったが販売状況が悪くキャンペーンを継続した、などの背景があったとしても処分が軽くなることはありません。

販売や表示の開始後に延長を決めたり、プランを変更したりしなければならない際には、法的な視点も忘れずに調整を行いましょう。

誰が負う?アフィリエイターの記事に対する法的責任について

広告主がアフィリエイターや代理店へ(広告の一部として使用する)記事作成を依頼し、その記事中に景品表示法上の不当表示があった場合には、原則、広告主責任となります。「(アフィリエイターに)内容はお任せしているから」などと言っても、残念ながら責任を逃れることはできないのです。

また「ネット広告だし、依頼(の実態)は外から見えないので大丈夫」などと考えるのも、もはや時代遅れ。行政は、違反の疑われる広告が関与するあらゆる事業者に対して裏付け調査をし、措置命令に踏み切っていると言われおり、現にその流れで措置命令となった事案があるほどです。

あなたが広告主側(またはそのサポート・代行者)である場合には、アフィリエイターを含む一連の関係者に対して正しい監督責任を果たす意識が必要です。

具体的には、契約の際から記事作成の注意点や禁止事項をしっかり伝えることや、それが守られているかどうかのチェック、広告が掲載されているサイトでのパトロールなど、違反を抑止するための基本的な行動をおろそかにしないことが大事なのではないでしょうか。

もちろん、表示内容の問題は景品表示法だけが適用されるわけではありません。アフィリエイター側であれば「処分は広告主側だから関係ない」と開き直っていても、他の法律で処分されたり民事裁判など紛争に巻き込まれたりするリスクはなくなりません。
自分の記事が法令に違反することがないよう、細心の注意をはらっていきましょう。

もはや万能ではない、“打ち消し表示” について

「打消し表示」とは

景品表示法で言うところの「打ち消し表示」とは、

  • 「全品半額!」と強調しながら「※ただし・・・は対象外」と限定する。
  • 「追加料金、一切不要」と強調しながら「※・・・は別途10万円」と追加する。
  • 「たわしで100回洗ってもOK」と強調しながら「※こすり洗い不可」と否定する。

などのようにいくつかのパターンがあります。
法律上、打ち消し表示そのものをすべて禁じているわけではありませんが、その表示方法や全体の訴求内容の印象から、「不当表示」と見なされる場合があるため、打ち消し表示を行う際には十分な注意が必要です。

「不当表示」と見なされない為に

まず、消費者に認識されないような表示は避けましょう。文字のサイズや色、表示する場所などを「見る側」の目線でチェックし、誰もが打ち消し表示に気づけるような表示に配慮することが重要です。

また最近の広告でよく見られる「※個人の感想です」や「※効果には個人差があります」なども打ち消し表示の一種ですが、この表示があれば何でも許されるわけではありません。
強調表示(「誰でも英語が話せるようになる」や「1週間で10キロやせました」など)に相応の客観的根拠がないにも関わらず、あたかも広告を見る人にも該当するかのように強調すること自体に問題がある(たとえ打ち消し表示があったとしても免責されない)というのが消費者庁の見解です。

事業者側に都合の良い情報提供を評価せず、ごく普通の常識を持った消費者がどのような印象を受けて購入したかが検討され、措置命令が出されるのです。

広告する際には小手先のテクニックで切り抜ける方法を探すのではなく、商材の価値や魅力について強調する場合には、その根拠をしっかり準備すること。同時に、ユーザー誤認を招かないように表示するという基本姿勢が世の中から求められているのです。

広告の表現方法については、以下の記事でも紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみて下さい。

まとめ

インターネット広告が急速に変化する中、一般消費者と事業者間でのトラブルも増え、景品表示法の重要性が取りざたされています。新たな規制が設けられ、違反広告の取り締まりが厳しくなっていると感じるニュースも増えています。
今、広告に関わる人たちに求められているのは、法令遵守を徹底しながらユーザー目線で企画や広告を手掛けるという基本姿勢ではないでしょうか。
売上や成果という側面ばかりに偏るのではなく、本当の意味でお客様を大切にできる広告や表示とは何かを追求し、実践し続ける企業でありたいと考えています。

著者(writer)
Sienca 事務局

リスティングをはじめとした運用型広告など、インターネット広告全般の運用サポートを実施しております。BtoCからBtoBまで様々なクライアント様の広告運用により得た知見を基にブログをお届けします。

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