ChatGPTのDeepResearchとは?主な機能や性能、使い方について解説
従来のAIチャットの枠を超えた本格的な調査・検索ができるChatGPTのDeepResearch。
しかし、以下のように具体的な機能や活用方法について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
「ChatGPTのDeepResearchって通常のモードとどう違うの?」
「どうやって活用したらいいの?」
そこで本記事では、ChatGPTのDeepResearchの基本機能や通常モードとの違い、具体的な使い方や料金プラン、活用例までをわかりやすく解説します。
「ChatGPTのDeepResearchを使いこなせるようになりたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
ChatGPTのDeepResearchとは?通常モードと何が違う?

DeepResearch(ディープリサーチ)は、OpenAIが2025年3月にリリースした、ChatGPTの高度な情報調査モードです。
従来の通常モードでは、1回のプロンプトに対して1つの回答が返ってくるだけでしたが、DeepResearchでは「段階的に情報を収集・分析・整理してくれる」という違いがあります。
ポイントは、ChatGPTがユーザーの代わりに「リサーチを進めてくれる」という点です。
単なる検索や会話のやりとりではなく、以下のような流れをAIが自動で行います。
- ユーザーの質問意図を理解
- 必要な調査ステップを分解
- 複数の信頼ソースを参照
- 情報を整理・比較し、根拠付きで回答
つまり、「調べるのに時間がかかる」「何から聞けばいいかわからない」といった課題を、ChatGPT側が先回りしてサポートしてくれるのです。
そのほか、通常モードとDeepResearchには以下のような違いがあります。
項目 | 通常モード | DeepResearchモード |
---|---|---|
情報収集 | 単発の質問と回答 | マルチステップで調査が進行 |
出典表示 | あり(一部) | 複数ソースを明示、引用も丁寧 |
ユーザーの操作量 | 多め(質問を何度も投げる必要あり) | 少なめ(AIが自動で掘り下げ) |
精度と信頼性 | 中程度(ユーザーの質問力に依存) | 高め(AIが調査範囲を自動拡張) |
対応内容 | 回答中心 | 調査・分析・比較・要約まで対応 |
ChatGPTのDeepResearchの主な機能
ここでは、DeepResearchで使える代表的な機能を見ていきましょう。マーケティングやビジネスリサーチに役立つ、実務的な観点から解説していきます。
推論モデルを用いた多段階調査が可能
DeepResearchの最大の特徴は、AI自身が調査内容を分解し、自動で複数のステップに分けて回答を構築する「マルチステップリサーチ」ができる点です。
通常のChatGPTでは、1回の質問に対して1回きりの回答しか得られませんが、DeepResearchでは次のような流れが発生します。
【調査の進行イメージ】
- ユーザーの質問を分析
例:「2025年のSNS広告トレンドを教えて」など - 関連するサブトピックを自動抽出
例:「広告予算の傾向」「新規フォーマットの普及」「各SNSごとの動き」など - それぞれのトピックをWeb上で調査・分析
- すべてをまとめて、一貫性あるレポートとして提示
この一連の流れは、ユーザーが細かく指示しなくても、AIが自律的に“考えて調べる”プロセスとして動いてくれます。
そのため、「1つの質問から網羅的に情報を引き出したい」といったシーンでも非常に役立つでしょう。
PDFや画像などの分析・調査にも対応
DeepResearchは、テキストの調査だけでなく、PDFファイルや画像などのデータにも対応しています。
そのため、商品企画書、調査レポート、カンファレンス資料、スクリーンショット画像といった「目で見て読む」形式の資料も、そのままアップロードして分析・要約してもらうことが可能です。
なお、DeepResearchが対応している主なファイル形式は、以下のとおりです。
- PDF(調査資料、論文、ホワイトペーパーなど)
- 画像ファイル(PNG、JPGなど)
- プレゼン資料(スライド画像化されたもの含む)
- 手書きのホワイトボード写真(文字認識精度はやや限定)
たとえば、競合の資料をPDFでアップロードし「この中で新しい戦略的要素は何か?」と聞くと、DeepResearchがPDF内の内容を読み取り、戦略の意図や構成を要約・解釈してくれます。
複数の出典先の明示
DeepResearchでは、回答の裏付けとなるソースを明確に表示してくれるのも大きな特徴です。
通常モードのChatGPTでも一部出典表示は可能ですが、DeepResearchでは出典表示が標準機能として組み込まれています。
また、出典元は1つではなく、複数の情報源を同時に提示してくれるため、信頼性の確認や追加調査をスムーズに行えるのも魅力です。
複数の出典があることで、情報の偏りを避けたり、対立する視点を比較したりすることもできます。
Pythonを活用したデータの分析・出力
DeepResearchには、ChatGPTの「Pythonコード実行機能」が組み込まれており、調査だけでなくデータの分析・グラフ作成・CSV出力なども自動で対応可能です。
たとえば、以下のような要望にも柔軟に対応できます。
- CSVファイルの中から、売上が高い順に商品を並び替えて
- 週ごとの平均クリック率を計算してグラフ化して
- アンケート結果(PDFやExcel)を読み込んで、傾向を教えて
DeepResearchはこれらの要望に対して、Pythonを自動で生成・実行し、視覚的にわかりやすい形で結果を提示してくれます。
しかも、コードも合わせて表示されるため、「何を根拠にこのグラフが出たか」まで把握できるのがポイントです。
また、結果のデータはそのままCSVやExcel形式でエクスポートできるので、レポート作成やチーム共有の資料にもすぐ活用できます。
ChatGPTのDeepResearchの性能・精度
DeepResearchは、通常のChatGPTよりも調査タスクに特化した処理能力を持ち、より正確で網羅的な回答を実現しています。
実際にOpenAIによるベンチマークテストでは、ほかのAIモデルと比べて以下のような高い性能を示しています。
なお、各ベンチマークの概要は以下のとおりです。
【各ベンチマークテストの概要】
- Humanity’s Last Exam:人間の知識の最先端を反映した難問を集めたテスト。テスト内容はテキスト・画像を含む100科目以上、2,700問にも及ぶ。
- GAIA:汎用AIアシスタントとしての能力を評価する指標。推論・マルチモダリティ処理、ウェブブラウジングなど、日常的なタスク処理にかかわる項目を評価する。
【Humanity’s Last Examの結果】
モデル | 精度(%) |
---|---|
GPT-4o | 3.3 |
Grok-2 | 3.8 |
Claude 3.5 Sonnet | 4.3 |
Gemini Thinking | 6.2 |
OpenAI o1 | 9.1 |
DeepSeek-R1* | 9.4 |
OpenAI o3-mini-medium* | 10.5 |
OpenAI o3-mini-high* | 13.0 |
OpenAI ディープリサーチ** | 26.6 |
【GAIAの結果】
レベル1 | レベル2 | レベル3 | 平均 | |
---|---|---|---|---|
以前の SOTA※ | 67.92 | 67.44 | 42.31 | 63.64 |
ディープリサーチ(pass@1) | 74.29 | 69.06 | 47.6 | 67.36 |
ディープリサーチ(cons@64) | 78.66 | 73.21 | 58.03 | 72.57 |
※SOTA は “State of the Art” の略で、「最先端技術」 や 「最高水準」 といった意味です。AI や機械学習の分野でよく使われる用語で、GAIA ベンチマークのような公開された成績比較表で、最も高いスコアや精度を達成したモデルが「SOTAを更新した」と表現されます。
以上のデータからもわかるとおり、DeepResearchはほかのAIや通常モードと比べて精度や評価が高いといえます。
つまり、単なる「情報提示AI」ではなく、“使える答え”を導き出すための設計思想が反映されたモードといえるでしょう。
ChatGPTのDeepResearchとGeminiの違い
GoogleのGeminiも、ChatGPTと似たような目的で使われるAIですが、DeepResearchとはアプローチや使い勝手に明確な違いがあります。
具体的な違いについて、以下で詳しく見ていきましょう。た。
項目 | ChatGPT(DeepResearch) | Google Gemini 2.5 |
---|---|---|
調査プロセス | 多段階で自動設計し、AIが順に進行 | 単発プロンプト形式が中心 |
出典の提示・信頼性 | 複数ソースを明示、根拠を整理 | ソースは明示されるが、少数・限定的なことも多い |
思考の深さ | 推論・比較・要約に優れ、複雑な課題に対応 | 網羅性はあるが、構造的な分析は指示が必要 |
データ分析機能 | Pythonを使って可視化・統計処理が可能 | Gemini Advanced 2.5ではPython不可(Apps Scriptや拡張は別途) |
料金 | 無料*回数制限あり | 無料*回数制限あり |
GeminiはGoogle検索との連携に強みを持ち、速報性や幅広い情報探索には適していますが、「考えながら調査を進める」体験はChatGPTのDeepResearchに軍配が上がるでしょう。
ただし、最近はGeminiにもDeepResearch機能が搭載されており、ChatGPTのDeepResearchと似たような調査が可能になっています。
ChatGPTのDeepResearchの利用料金
ChatGPTのDeepResearch機能は、無料プラン・有料プランの両方で利用可能です。
ただし、無料プランの場合は検索回数に制限があることを覚えておきましょう。DeepResearchを頻繁に使用する場合は、Plusプラン以上への加入が必要です。
各プランごとの利用料金・回数制限については、以下の表でまとめているので、参考にしてください。
項目 | 無料 | Plus | Pro | Team | Enterprise |
---|---|---|---|---|---|
料金 | 無料 | 20ドル | 200ドル | 25~30ドル/人 | 要問合せ |
利用回数 | 5回/月*軽量版 | 25回/月 | 250回/月 | 25回/月 | 25回/月 |
ChatGPTのDeepResearchの使い方

ChatGPTのDeepResearchは、ChatGPTにログインすればすぐに使い始めることができます。
使い方自体は非常にシンプルですが、通常のチャットとは少し異なる操作や進行の仕方があるため、初めて使う際は基本的な流れを押さえておくのがおすすめです。
ここでは、DeepResearchを利用するための具体的な手順を以下4ステップでわかりやすく解説します。
- ChatGPTにログインする
- 調査内容(プロンプト)を入力する
- ChatGPTからの質問に回答する
- 調査完了を待つ
それぞれの手順について、詳しく見ていきましょう。
ChatGPTにログインする
まずは、以下のリンクからChatGPTの公式サイトにアクセスし、アカウントにログインしましょう。
ログインができたら、検索窓の「ツール」から「DeepResearch」を選択します。

これでDeepResearchモードでの調査準備は完了です。
調査内容(プロンプト)を入力する
次に、検索窓に質問・調査したい内容を記入します。
DeepResearchでは、通常のChatGPTと同じように、検索・調査したい内容をテキストで入力することが可能です。
ただし、単なる質問ではなく“調査依頼”として入力する意識を持つと、より高度な回答が得られます。
たとえば、「2025年のBtoBマーケティングトレンドを調査して、根拠と出典を提示してほしい」というように、「調べて・比べて・まとめてほしい」といった多段階タスクを含む依頼文がおすすめです。

プロンプトが入力できたら、Enterキーもしくは、「↑」をクリックして調査を開始しましょう。
ChatGPTからの質問に回答する
DeepResearchでは、調査を開始するとすぐに回答が返ってくるのではなく、ChatGPT側から「確認の質問」や「選択肢の提示」が行われることがあります。
これは、AIがより正確な調査を行うために、前提条件や調査の方向性を明確にするためです。
たとえば、「2025年のBtoBマーケティングトレンドを調査して、根拠と出典を提示してほしい」という調査依頼をすると、以下のような質問が返ってきます。

これらの質問に対しては、チャットで答えるだけでOKです。
質問に回答すると、DeepResearchがユーザーから得た追加情報をもとに調査設計を再構成し、より的確なリサーチを行います。
回答が面倒に感じる場合もありますが、ここでのやり取りが調査の精度を大きく左右するため、なるべく具体的に回答するのがおすすめです。
調査完了を待つ
必要な入力や確認を終えると、DeepResearchが自動的にリサーチを開始します。
この間、ユーザー側で特別な操作をする必要はありません。
AIが複数のWebページやデータソースを参照しながら、調査・要約・比較・出力といった一連のプロセスをバックグラウンドで進めてくれます。
なお、リサーチ中は以下のようにリサーチの進捗を確認可能です。


調査にかかる時間は調査内容にもよりますが、数十秒〜数分程度で高品質なレポートが出力されるケースが多いです。
完了すると、タイトル付きの要約+出典リンクがセットになって表示されます。

また、右上の「ダウンロードする」や「リンクを共有する」からエクスポート・共有も可能です。出力された結果をもとに、分析や戦略立案などに役立てましょう。
ChatGPTのDeepResearchの活用例

DeepResearchは、単なるQ&Aの延長ではなく、実務にそのまま使える「調査・分析アシスタント」としてのポテンシャルを持っています。
特に、マーケティングや経営企画、新規事業などの分野では、人手では時間がかかる情報整理や構造化を自動で進められる点が大きなメリットです。
ここでは、実際にどのようなビジネスシーンでDeepResearchが役立つのか、代表的な活用例を3つ紹介します。
市場調査における活用例
DeepResearchの活用例として代表的なのが「市場調査」です。
DeepResearchを使えば、特定業界の動向・トレンド・課題を短時間で把握でき、調査レポートのベース作成まで自動化できます。
たとえば、以下は「カメラ業界における生成AIを用いたマーケティングトレンド」について、DeepResearchで調査した結果です。

上記は一部ですが、代表的なメーカーごとの取り組みや事例について、ソースを示しながら丁寧にまとめられています。
これだけの調査・分析を人間の手で行うには、最低でも1~2時間はかかりますが、DeepResearchを活用することで、数分程度で完了することが可能です。
競合分析における活用例
DeepResearchは、マーケティングにおける競合分析でも非常に役立ちます。
具体的な競合他社や自社と比較してほしいポイントを共有するだけで、「自社にはどこが足りていないのか」という点を分析してもらえます。
たとえば、以下はコンビニ大手のセブンイレブンの競合分析をDeepResearchに依頼した結果です。

調査結果では、店舗数や売上、商品ラインナップなどさまざまな視点から競合分析がされています。
このように、DeepResearchによって競合分析にかかる時間を短縮できれば、その後の戦略立案の時間をたっぷり確保できるでしょう。
戦略立案における活用例
DeepResearchでは、競合分析や自社データをもとにした戦略立案でも活用することができます。
たとえば、先ほどの「セブンイレブンからみた競合分析」の結果をもとに、戦略立案を依頼すると、以下のような戦略を立案してくれます。

この結果をもとに、具体的な戦略へとブラッシュアップしたり、アイデアの参考にしたりすることが可能です。
「広告戦略を作成してください」「SNS戦略を作成してください」のように、プロンプトによっては特定の分野における戦略立案も依頼できるので、さまざまなシーンで役立つでしょう。
まとめ
ChatGPTのDeepResearchは、通常モードとは一線を画す、高度なリサーチ特化型の機能です。
特に中小企業のマーケティング担当者にとっては、戦略立案から競合調査、資料作成、施策の壁打ちまで、日々の業務を効率化し、より質の高い意思決定をサポートしてくれる強力なツールといえるでしょう。
まだ使いこなせていないという方も、まずは1つのプロジェクトや調査テーマで試してみるのがおすすめです。きっと、「これまでの調べ方には戻れない」と感じるはずです。