広告にAIを活用する方法とメリット|注意点や事例、担当者に求められることまで解説
近年、広告業界では生成AIの活用が急速に進んでいます。
クリエイティブ制作の効率化や広告運用の最適化など、AIがもたらすメリットは多岐にわたります。
本記事では、広告にAIを活用する具体的な方法やメリット、注意すべきポイント、実際の成功事例、そしてAI時代に広告担当者に求められるスキルまで詳しく解説します。
AI広告とは?

AI広告とは、広告の企画・制作・配信・分析といった各プロセスに人工知能技術を取り入れた広告手法のことを指します。
具体的には、クリエイティブの生成、配信先の最適化、効果測定と改善提案など、広告に関わる幅広い業務をAIが担います。
最近では、伊藤園などの大手企業もAI広告を活用し、CMなどで話題になりました。
生成AIによって自動化が進む広告業界
広告業界では現在、生成AIを活用した自動化の波が押し寄せています。
実際、サイバーエージェントが2025年6月に実施した調査によると、大手広告主企業の担当者のうち約54%は、すでにクリエイティブ制作で生成AIを活用していることがわかっています。
また、バナー広告や動画広告において、3年後の制作主体が「人よりもAI」になると予想する企業は半数以上に達しており、AI広告の普及具合がうかがえます。
さらに直近では、2025年5月にはGoogle広告に新機能「AI Max for Search Campaigns」が追加されたほか、Meta社でAIによる広告運用の完全自動化が構想されるなど、AI広告の普及は加速度的に進んでいるといえるでしょう。


広告の制作・運用に生成AIを活用するメリット

広告業務に生成AIを導入することで、企業は多くのメリットを享受できます。
ここでは主な4つのメリットについて解説します。
広告運用を効率化できる
生成AIは、広告運用における多くの作業を自動化し、業務効率を大幅に向上させます。
従来は人手で行っていたキーワード選定、入札単価の調整、A/Bテストの実施といった作業をAIが担当することで、運用担当者はより戦略的な業務に集中可能です。
実際、AIエージェントの導入により、従来1〜2日かかっていた広告効果分析やレポート作成の作業が2分で完了するようになった事例も存在します。
今後は、AIを活用できるかどうかが広告運用の成果に直結するといっても過言ではないでしょう。
ターゲティング精度を向上できる
AIは膨大なユーザーデータを分析できるため、ターゲティングや配信の精度が向上するメリットもあります。
従来の広告配信では、デモグラフィック情報や行動履歴などの限られたデータをもとにターゲティングを行っていました。
しかし、AIを活用すればユーザーの検索パターン、閲覧履歴、購買意向などを総合的に分析し、最適なタイミングで最適な広告を配信できます。
魅力的なクリエイティブを手軽に作成できる
広告運用にAIを活用する大きなメリットとして、クリエイティブ制作のハードルが下がる点も挙げられます。
生成AIを活用すれば、画像、動画、テキストなど、さまざまな形式のコンテンツを短時間で大量に生成可能です。
これまでデザイナーと時間をかけて作成していたクリエイティブも、AIに任せることで手軽に作成できるようになります。
さらに、AIは過去の広告配信データを学習することで、効果の高いクリエイティブのパターンを予測可能です。
そのため、単なる工数削減ではなく、運用成果の向上も期待できるでしょう。
人件費や運用工数を削減できる
広告運用にAIを取り入れるメリットとして、広告運用にかかる人件費や作業負担を大きく減らせる点も見逃せません。
なぜなら、入札調整やレポート生成といった反復作業をAIが自動でこなせば、少人数での運用が可能になるからです。
また、クリエイティブ制作では、初稿づくりやバリエーション展開をAIが短時間で行えるため、デザイナーやコピーライターはブランドの方向性の判断や品質チェックといった“人にしかできない作業”に集中できます。
このようにAIが下支えすることで作業効率が向上し、特に広告予算が限られる中小企業にとっては費用対効果の高い運用体制を構築しやすくなるでしょう。
広告の制作・運用に生成AIを活用する方法

ここからは、実際に広告業務でAIをどのように活用できるのか、具体的な方法を見ていきましょう。
広告アイデア出し
生成AIは、広告キャンペーンの企画段階から活用可能です。
ターゲットペルソナの設定、訴求ポイントの洗い出し、キャンペーンコンセプトの提案など、企画の初期段階でAIにアイデアを出させることで、新たな視点を得られます。
例えば、商品の特徴や競合情報、ターゲット層の情報をAIに入力すると、複数の広告コンセプト案を提示してくれます。
これらのアイデアをベースに、人間がさらにブラッシュアップすることで、短い時間で最適化されたキャンペーンを作成できるでしょう。
キャッチコピーや訴求文の作成
広告文やキャッチコピーの作成は、生成AIが得意とする領域の一つです。
例えば、商品の特徴やターゲット層、訴求したいメッセージを入力し、キャッチコピー生成を依頼するだけで、複数のバリエーションを瞬時に生成できます。
そのほか、Google広告のテキストのカスタマイズ(旧:自動作成アセット)では、ランディングページの内容や既存の広告文、登録キーワードをもとに、ユーザーの検索意図に合わせた広告見出しや説明文を自動で生成可能です。
これにより、検索クエリごとに最適化された広告文を配信でき、クリック率の向上が期待できます。
また、多言語展開する際も、AIを活用することで各言語に適した表現を効率的に作成できます。
画像・イラスト・動画の作成
生成AIは、広告で使用する画像・イラスト・動画などの作成にも活用できます。
最近では、OpenAIの動画生成ツール「Sora」のようなAIツールも登場しており、プロンプトを入力するだけで簡単にクリエイティブを制作可能です。
校正や誤字脱字チェック
生成AIは、クリエイティブ制作の最終チェック工程でも活躍します。
広告文の誤字脱字チェック、文法の確認、ブランドガイドラインへの準拠確認など、細かいチェック作業を自動化することが可能です。
また、AIは広告文のトーンや表現が適切かどうかも判断できます。
例えば、ターゲット層に不快感を与える可能性のある表現や、誤解を招きやすい言い回しを検出し、修正案を提示してくれます。
広告の制作・運用に生成AIを活用する際の注意点

AIは強力なツールですが、広告業務への活用にあたってはいくつかの注意点があります。
- 最新トレンドの把握には弱い
- データや個人情報の扱い
- 分析結果にはバイアスがかかる可能性がある
- 著作権や知的財産権を侵害するリスクがある
- AI生成物には誤情報が含まれる恐れがある
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
最新トレンドの把握には弱い
生成AIは過去のデータをもとに学習しているため、最新のトレンドや時事ネタへの対応が苦手です。
そのため、流行に敏感なファッションやエンタメ業界においては、AIが生成したコンテンツが時代遅れに見える可能性があるでしょう。
また、今後のトレンド予測についても、AIが行える範囲は限定的です。
トレンドには社会情勢、文化的背景、突発的なイベントなど、データだけでは捉えきれない要素が影響するため、AIの予測が必ずしも正しいとはいえないでしょう。
最新のトレンドを反映した広告を制作する際は、人間の感性や市場感覚を重視し、AIはあくまで補助ツールとして活用すべきです。
データや個人情報の扱い
AIツールに機密情報や個人情報を入力することは、情報漏洩のリスクを伴います。
特にクライアントから受け取った機密情報や、顧客の個人データなどを生成AIに入力する際は、細心の注意が必要です。
企業として、AIツールの利用規約を十分に確認し、機密性の高い情報はAIに入力しないというルールを徹底することが重要です。
分析結果にはバイアスがかかる可能性がある
AIの判断には、学習データに含まれるバイアス(偏見や先入観)が反映される可能性があります。
例えば、過去の広告データに特定の性別や年齢層への偏りがあった場合、AIもその傾向を学習してしまいます。
これにより、意図せず差別的な広告表現や、特定の層を排除するようなターゲティングが行われるリスクがあるのです。
そのため、AIが提示する分析結果や提案を鵜呑みにせず、常に人間の視点で倫理的な観点からチェックすることが求められます。
著作権や知的財産権を侵害するリスクがある
生成AIが作成したコンテンツには、著作権侵害のリスクが潜んでいます。
AIは膨大な既存データを学習して新しいコンテンツを生成するため、既存の著作物と類似した表現が生まれる可能性があるのです。
特に画像生成AIでは、特定のアーティストやアニメのスタイルを模倣したり、既存のキャラクターに酷似した画像が生成されたりする事例が報告されています。
そのため、広告に使用する前には、生成されたコンテンツが既存の著作物と類似していないか、十分に確認することが重要です。
AI生成物には誤情報が含まれる恐れがある
生成AIは時として、事実と異なる情報を自信満々に出力することがあります。
これは「ハルシネーション」と呼ばれる現象で、AIが学習データをもとに誤った推測を行うことで発生します。
広告において誤情報を発信することは、企業の信頼性を大きく損なう恐れがある行為です。
そのため、広告内に製品の仕様や効果効能などを記載する際は、AIが生成した内容を必ず人間が確認し、正確性を検証する必要があります。
AIはあくまでドラフト作成を補助するツールと捉え、最終的な内容の正確性は人間が担保するという姿勢が不可欠です。
広告業界におけるAI活用事例

ここからは、広告業界における実際のAI活用事例を紹介します。これからAIの活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
MOTA車買取
車の一括査定サービス「MOTA車買取」を展開する株式会社MOTAは、YouTube広告の「動画アクションキャンペーン」とPerformance Max(P-MAX)を活用し、大きな成果を上げました。
同社は、後発サービスとして市場シェアの低さに課題を抱えていました。そこで、従来のラジオ広告や検索広告に加えて、AI活用型のYouTube広告を本格導入。
結果、動画広告の本格運用が初めてにも関わらず、全体のコンバージョンは36.5%増加し、車買取の申込数も51%増加しました。
AIによる自動最適化により、効率的に認知拡大とコンバージョン獲得を同時に実現した好例です。
【参考】
キャンペーンの自動化と動画広告の活用で、コンバージョンを 36.5%増加させた MOTA
タイミー
スキマバイトサービス「タイミー」を提供する株式会社タイミーも、AI活用型の動画アクションキャンペーンで成果を上げています。
同社は2023年に事業者向けプラットフォームを開設し、より幅広い業種にサービスを認知してもらう必要がありました。
そこで、飲食、物流、小売、ホテル、介護など、業種ごとに異なる課題を抽出し、それぞれに適した訴求内容の動画を30本以上制作。
これらの動画をAIが最適なターゲットに配信することで、業種や事業規模に応じた効果的なアプローチを実現しています。
AIによるマッチング最適化とデータ分析を活用することで、事業者のアカウント開設数を効率的に増やすことに成功しました。
【参考】
Google AI で成果を最大化する YouTube 広告事例 —— YouTube Works Awards Japan 2024 ファイナリスト作品に学ぶ
伊藤園
伊藤園は、「お〜いお茶 カテキン緑茶」のリニューアルにおいて、パッケージデザインからテレビCMまで、包括的にAIを活用しました。
パッケージデザインは、画像生成AIを活用して商品イメージからデザインを生成し、それをデザイナーが修正するといった流れで制作。この手法により、従来よりも短期間で多様なデザイン案を検討しています。
さらに注目を集めたのが、日本初となるAIタレントをテレビCMに起用したことです。
「未来の自分を今から始める」というコンセプトを表現するため、AIで生成した人物を白髪の年配女性と若い女性の両方で登場させました。
このCMはSNSで大きな話題となり、YouTube上での再生回数は短期間で70万回を突破。「伊藤園らしくない」「新しいことに挑戦する企業」といった声が寄せられ、ブランドイメージの刷新にも成功しています。
【参考】
AIタレントを起用した「お~いお茶 カテキン緑茶」のTV-CM第二弾!新作TV-CM「食事の脂肪をスルー」篇を、4月4日(木)より放映開始
AI時代の広告担当者に求められることとは

AIが広告制作や運用の一部を担うようになったことで、現場の広告担当者の役割も変化しています。
ここからは、AI時代に広告担当者に求められる主なスキルと役割について見ていきましょう。
戦略立案とビジネス課題解決力
AIは広告運用における「実行」部分を担当できますが、戦略を立てるのは人間の役割です。
もちろん、戦略立案や企画の段階でもAIは活用可能です。しかし、あくまで最終決定をするのは人間であることに変わりはありません。
そのため、今後はAIを活用しながらビジネス課題を正確に把握し、それを解決するための広告戦略を立案する力が今まで以上に重要になるでしょう。
AIをどのように活用すれば目標達成できるかを考える、上流工程の思考力が求められます。
AIへの適切な指示出し(プロンプトエンジニアリング)
AIから質の高いアウトプットを引き出すには、適切な指示(プロンプト)を出すスキルが必要です。
いくらAIが優秀になっているとはいえ、明確な指示がないと成果物のクオリティが低くなったり、的外れな分析結果となったりするケースも少なくありません。
そのため、「どんなことをAIに任せたいのか」を明確にして、そのために必要なプロンプトを設計するスキル(プロンプトエンジニアリング)が求められるようになるでしょう。
AIの判断の検証と修正
広告担当者には、AIの出力を鵜呑みにせず、批判的に評価する能力が必要です。
AIが提案したクリエイティブやターゲティング戦略は、必ずしも正しいとは限りません。
戦略やクリエイティブは本当に適切か、ブランドイメージに合っているかなどを判断するのは人間です。
これらのスキルがないままAIに広告運用を任せてしまうと、思ったような成果を得られない恐れがあるでしょう。
倫理的な判断力と説明責任
AIが生成したコンテンツには、バイアスや著作権侵害のリスクが潜んでいます。そのため、広告担当者にはこれらのリスクを理解し適切に管理する能力が必要です。
また、AIを活用した広告施策について、クライアントや消費者に対して透明性を持って説明する力も求められます。
単に「AIが分析した結果この戦略が最適です」と説明するのではなく、なぜAIがそのように判断したのかをロジカルに説明できなければ、信頼を勝ち取るのは難しいでしょう。
AI広告に関するよくある質問

最後に、AI広告についてよくある質問をまとめました。似たような疑問をお持ちの方は、AI広告を導入する前に確認しておきましょう。
AI広告は禁止されている?
現時点で、日本においてAI広告が全面的に禁止されているわけではありません。
ただし、中国など一部の国ではAI生成コンテンツの規制が進んでおり、特定の用途でAI広告が制限されているケースがあります。
そのため、日本でも今後、AI生成コンテンツに関する法整備が進む可能性は否定できません。
特に著作権法や景品表示法、消費者保護の観点から、AI広告に対する規制が導入される可能性がある点には注意が必要です。
企業としては、法律の動向を常にウォッチし、コンプライアンスを遵守した広告運用を心がけることが重要です。
AI広告が気持ち悪いと言われる理由は?
AI広告、特にAI生成画像や動画を使った広告に対して、「気持ち悪い」「不気味」といった反応が見られることがあります。
その代表的な原因として挙げられるのが、「不気味の谷」現象です。
不気味の谷現象とは、AIで生成された人物が人間に近いものの完全ではない場合、違和感や不快感を覚えてしまうというもの。
一見、人間に見える画像でも、指の形が不自然だったり、表情が硬かったりすると、リアルなのに何か違うという印象を与えてしまうのです。
実際、マクドナルドが過去に公開したAI広告では、不自然な画像が「怖い」「気持ち悪い」と批判を浴びました。
まとめ
広告業界におけるAI活用は、もはや選択肢ではなく必須の取り組みとなっています。
生成AIを活用することで、クリエイティブ制作の効率化、ターゲティング精度の向上、運用工数の削減など、多くのメリットを享受できます。
一方で、最新トレンドへの対応の弱さ、データ管理の重要性、バイアスや著作権のリスクなど、注意すべき点が多いのも事実です。
そのため、これらのリスクを理解し、適切に管理しながらAIを活用することが、成功の鍵となるでしょう。
重要なのは、AIを単なるツールとして使うのではなく、自社のビジネス課題を解決するための戦略的なパートナーとして位置づけることです。
AIに任せられる業務は積極的に自動化し、人間にしかできない創造的で戦略的な仕事に注力することで、競争力のある広告活動を展開できるでしょう。

