【入門編】Google Analytics 4(GA4)が遂に登場!2つのポイントで誕生の経緯を分かりやすく解説(後編)
2020年10月14日にGoogle Analytics 4(通称:GA4)が正式にリリースされました。これまで多くのサイト運営者に利用されてきたユニバーサル アナリティクス(通称:UA・旧GA)に代わりGoogle Analyticsの新たなスタンダードとして、GA4の活用が期待されています。
一方でGoogle Analytics 4から新たに登場した指標や機能が複数存在し、ユニバーサル アナリティクスを利用していた方は少なからず混乱しているのではないでしょうか。
前編では動画・アプリサービスの普及という観点からGA4が誕生した経緯を見てきました。後編ではプライバシーファーストの時代におけるGA4の重要性について解説していきます。
前編はこちら ▼
ポイント2:個人情報保護強化の潮流(プライバシーファーストの時代)
はじめにGoogle アナリティクス 4(以下、GA4)と個人情報保護の話に直接的な関係性があるのか疑問に思われる方も少なからず居られるのではないでしょうか。Googleは、個人情報として使用または認識できるデータをGoogleへ送信することをポリシーで禁止していますし、Google Analyticsも個人情報は取得していません。
アナリティクスヘルプ「個人情報(PII)を送信しないようにする方法はこちら」
https://support.google.com/analytics/answer/6366371
ですが、近年はネット上の行動履歴データもプライバシー保護の枠組みに含まれるケースが増えてきました。
情報通信技術の発展や通信ネットワークが急速に進歩し、IoTやビッグデータ等の技術も定着したことで、ネット上の行動履歴がビジネスシーンで利活用されると同時に、適切に管理・保護しようという動きも活発化してきたのです。
2018年5月に欧州で施行されたEU一般データ保護規則(GDPR)では、オンライン識別子(CookieやIPアドレス)も個人データに該当すると定義されており、Cookieを使用する場合は事前にユーザーの同意を得ることが求められています。
欧州で施行された法律ですが、EU域外の事業者にも幅広く適用されます。例えばEU在住のユーザーが日本のサイトにアクセスした場合、アクセスがあった日本のサイトはGDPRの適用範囲になります。
日本のサイトでも「当サイトを閲覧するユーザーはCookieの利用に同意したものとみなします~」という文と共に「許可」「許可しない」といったバナーが表示されるケースが増えてきました。
ブラウザによるトラッキング対策も加速しており、iOSでは既に3rd party cookieを完全にブロック、Chromeも3rd party cookieを2022年末までに停止することを発表しています。
GAは1st party cookieを利用してデータを取得していますが、Cookieの保存期間が短くなったことでユーザー数が増加しているように見える等、数値が正確に計測できない事象も発生しています。
この様なプライバシーファーストの潮流が強まるなか、いま我々は、
「ユーザーの意思を尊重してパーソナルデータをセキュアに管理しつつ、多様化するニーズの中で一人ひとりの行動や心理の変化に合わせてパーソナライズすることで「顧客体験(CX)」を最適化する」
というハードルの高いことを要求されているのです。
更にかみ砕いてしまえば「時代が求める適切な方法でデータを取得・管理しながら、サービスの最適化を図っていく」必要があるのです。
一見、当たり前のことのようですが、個人情報や個人データと見做されるもの及びその扱い方は、国や州によっても異なるため、グローバルに使われているGAにおいてはその対応について慎重を期さなければならないのです。
そこでGoogleは幾つかの仕組みを導入(予定を含む)しています。
1.Google Tag Managerの新機能サーバーサイドタグ(SSGTM)の登場
前章でも少し触れた内容ですが、GAではCookieの保存期間が短くなったことでユーザー数が増加したように見える等、数値が正確に計測できない事象が発生しています。
特にiOSではトラッキング防止機能としてITP(Intelligent Tracking Prevention)という機能を実装しており、1st party cookieに関してもJavaScriptによって発行された場合、Cookieが1日または7日で削除されてしまいます。
※Cookieが削除されると、削除後にユーザーが再訪した場合、新規ユーザーとして計測されてしまう。
この様なCookieの削除によって正確な数値が計測できないという問題を解決するため、GoogleはGoogle Tag Manager(通称GTM)というタグ管理ツールに新たな新機能を追加することで、GAで正確な数値を計測できるようにしています。
初心者向けと題した記事のためGoogle Tag Managerのサーバーサイド設定については詳細を割愛しますが、概要は以下の通りです。
GAのタグをサイトに埋め込む際、①GAのタグを直接HTMLに追加する方法と②Google Tag Manager(通称GTM)を経由して追加する方法の2パターンがあります。
このうち、後者の②Google Tag Managerを経由してGAのタグを設置し、更に新機能であるサーバーサイドタグ設定を使用すると、1st party cookieの有効期限が無限に設定できるのです。
これにより1日ないし7日で削除されていた1st party cookieが継続して使用できることで、ユーザー数をはじめとした数値が正確に計測できます。
その他にも、Google Tag Managerのサーバーサイド設定については開発者が以下のようなメリットをあげています。
- ブラウザ側の処理が減ることで、ページ表示が速くなる
- スパムを防げる
- 無限の可能性 ※こちらにITP対策なども含まれると思われます
Simo Ahava’s blog「FULL CONTROL AND OWNERSHIP OF THE DATA COLLECTED BY THE CONTAINER」
https://www.simoahava.com/analytics/server-side-tagging-google-tag-manager/#full-control-and-ownership-of-the-data-collected-by-the-container
<備考>
ちなみにsimo ahavaさんが運営している以下のサイトもおすすめです。
ブラウザ毎のCookieの取り扱いなどを一覧にしてくれています。
Cookie Status
https://www.cookiestatus.com/
2.Cookielessに対応していく(将来)
先程GTMのサーバーサイド設定で有効期限のない1st party cookieを発行できる話をしましたが、Googleは将来的にCookieless(Cookieそのものを使用しない)にも対応する可能性がでてきました。
Googleは以前から「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」という構想を発表し、3rd party cookie廃止以降もターゲティングや広告効果の測定ができることを目指していました。
最近では「Dovekey」といった仕組みを発表し、リターゲティングができる仕組みも考えているようです。
GitHub「Dovekey」
https://github.com/google/ads-privacy/tree/master/proposals/dovekey
3.Googleシグナルを活用した分析(将来)
Googleシグナルとは、ユーザーを特定するIDでクロスデバイスでの計測を可能とするものです。
Googleシグナルを使用するには以下が必要です。
サイト側
⇒ GAでGoogleシグナルの収集を有効にする必要がある
ユーザー側
⇒ Googleアカウントにログインしている
⇒ GA広告のパーソナライズをオンにしている
オプトイン形式のため本人の同意を必要とする近年のプライバシー保護の観点にも沿っています。
GA4ではGoogleシグナルを活用し、以下のようなことができると記載しています。
- Googleシグナルを有効にしているGoogleユーザーにクロスデバイス対応のリマーケティング広告を配信できる
- 人口統計と興味関心データなどの追加情報を収集できる
- クロスデバイスでユーザーの動きが把握できるため、カスタマージャーニーの作成に活用できる
データ取得に合意している一部のユーザーの行動履歴に対し、統計的処理を加え、機械学習による予測を行うことで、全体のユーザーの動きを把握できる仕組みを考えているようです。
Chromeユーザーはブラウザの60%以上(日本では50%弱)のシェアをもち、インターネットユーザーの88%がGmailを持っていることから、Googleシグナルのデータがユーザーの傾向を表すには十分といえるのかもしれません。
まとめ
後編では「個人情報保護強化の潮流(プライバシーファーストの時代)」という観点からGA4の必要性を見てきました。初心者向けと題しながらも小難しい用語も散見されているので、前編含めて改めてお伝えしたいのは以下の2点です。
- WEBだけでなく、アプリや動画の利用も増えてきたから全てまとめて分析できるようにするよ
- ユーザーのプライバシーを守りつつ、高度な分析ができるようにするよ
この2点がGA4誕生の経緯となります。
これからますます導入するサイトが増えるであろうGA4について、少しでも理解が深まれば幸いです。