CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?メリットや活用事例を解説
現代のビジネスにおいて、顧客データの活用は競争力の源泉となっています。Googleは2024年7月に3rd Party Cookieサポート終了の方針を撤回したものの、プライバシー保護の機運は依然として高まっており、企業が自社で顧客データを収集・管理し、活用できる環境の重要性は変わりません。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、企業がさまざまなチャネルやデバイスから得られる顧客データを一元管理し、統合的に活用できる環境を提供するプラットフォームです。顧客体験の向上やマーケティング施策の最適化において中心的な役割を果たします。
国内CDP市場は、ITRの最新レポートによれば2022年度の売上金額は118億円となり、2022年~2027年度までの年平均成長率は13.6%を予測しています。また、Gartnerが2025年1月に公表した日本企業のデータ活用調査では、全社的にデータ利活用で十分な成果を挙げている企業はわずか8%に過ぎません。こうした現状から、CDP導入と組織的なデータ活用体制の強化は、今後のビジネス競争力を左右する鍵となります。
【出典】
本記事では、CDPの基礎知識や導入メリット、具体的な活用事例について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
- CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、多様な顧客データを一元管理し、統合的に活用できる環境を提供するプラットフォームです。
- データの一元管理により、企業はリアルタイムで顧客の行動や嗜好を把握し、迅速かつ的確なマーケティング施策が可能になります。
- CDPはパーソナライズされたマーケティング施策の展開を支援し、顧客一人ひとりに合わせたプロモーションの提供を可能にします。
- 部門間でのデータ共有を促進し、全社的に顧客データを活用する環境を提供することで、一貫性のある顧客体験の提供を実現します。
- MAツールやBIツールなどさまざまなツールと連携することで、高度な分析やマーケティングの自動化が可能になり、データ活用を最大化します。
CDPとは?
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは、複数の場所に散らばった顧客データを一元化し、管理、分析、活用するためのシステムまたはプラットフォームのことです。
例えば、皆さんの職場では、「実店舗に加えてECサイトの運営も行っているが、店舗の顧客データとECサイトの顧客データが紐付いていないため、双方のデータを生かしたWebマーケティングができていない」という事態が起こってはいないでしょうか? このように、せっかく顧客データを収集しても、それぞれのデータがばらばらの状態ではうまく活用できません。収集したデータは統合し、一元管理することで最大限の力を発揮してくれます。そして、データの収集、統合、分析、施策連携を行うシステムこそCDPなのです。

現代のビジネスでは、顧客が様々なチャネルやデバイスを通じて企業と接触するため、それらの顧客行動データを効果的に収集し、活用することが競争力の鍵となっています。CDPは、ウェブサイトの閲覧履歴、購買情報、会員登録情報、興味関心データ、位置情報など、「ゼロパーティデータ」(顧客が企業に直接提供する意図のあるデータ)や「ファーストパーティデータ」(自社サイトやアプリで直接収集したデータ)といった多様なデータを集めて統合し、企業が顧客の全体像を把握できるようにします。
この統合されたデータは、リアルタイムで活用できるため、マーケティングやカスタマーサポートの現場で即時にパーソナライズされた対応が可能です。たとえば、CDPにより、顧客がオンラインで閲覧した商品や過去の購入履歴に基づいて、個別にカスタマイズされたプロモーションを提供することができます。これにより、顧客一人ひとりに対して最適なタイミングで関連性の高い情報を届けることができ、顧客満足度やエンゲージメントを向上させることが可能です。
さらに、CDPはデータを一元管理するだけでなく、デジタルマーケティング施策とも連携します。企業は、メールマーケティング、プッシュ通知、広告配信などの各種デジタル施策を、統合された顧客データに基づいて効果的に展開することができます。CDPは、顧客の行動データをもとに、施策のタイミングや内容を最適化し、顧客体験を高めながら、売上向上にもつなげることができるのです。
CDPを導入するメリット
顧客データを一括で管理できる
CDPを導入することで、企業は顧客データを一元的に管理できるようになります。通常、顧客データは会員登録、購買履歴、ウェブサイトの閲覧情報、興味関心情報など、異なるシステムやデータベースに分散してしまい、顧客の全体像を把握することが難しいのが現状です。しかし、CDPを利用すれば、これらのデータを統合し、全社的にデータを活用する基盤が整います。企業は、リアルタイムで顧客の行動や嗜好を把握できるため、迅速かつ的確な施策が可能になります。これにより、カスタマージャーニー全体を可視化し、顧客ロイヤリティの向上や収益拡大に貢献します。
顧客一人ひとりを掘り下げて嗜好を分析できる
CDPは、単にデータを統合するだけでなく、各顧客の嗜好や行動を深く分析する機能も備えています。顧客一人ひとりの購買履歴や閲覧履歴、興味関心をもとにして、パーソナライズされたマーケティング施策を展開することが可能です。たとえば、CDPを活用することで、特定の顧客に対して、過去の行動データに基づいたパーソナライズされたサービスやオファーを提供できます。これにより、顧客満足度を向上させ、より効果的なマーケティング活動が実現できます。
データを社内で共有し全社で活用できる
CDPは、部門間でデータを共有し、全社的に顧客データを活用できる環境を提供します。これにより、顧客に対して一貫性のある体験を提供することができ、企業全体の戦略においてもシナジー効果を発揮します。たとえば、マーケティングキャンペーンの結果を各部門と共有することで、営業チームがターゲットを効果的にアプローチすることが可能です。部門横断的なデータ活用は、業務効率化にも繋がります。
MAツールやBIツールなどさまざまなツールと連携できる
CDPは他のシステム、たとえばMA(マーケティングオートメーション)ツールやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携することが可能です。これにより、CDPに集約されたデータをもとに、さらに高度な分析やマーケティングの自動化が実現します。
例えば、MAツールと連携することで、CDPからのデータを活用し、特定の顧客に対して自動的にメールやプッシュ通知を配信できます。また、BIツールと連携することで、企業全体のパフォーマンスを測定し、より的確な意思決定を行うことができます。このように、CDPは外部ツールとも連携し、企業全体のデータ活用を最大化するための強力な基盤となります。


CDPとDMPとの違い
CDPの導入を検討する際、多くの方が「DMPとは何が違うのか?」という疑問に突き当たります。ここでは、混同されやすいDMPとの違いを深掘りし、貴社にとって最適なソリューションを選ぶためのヒントをご紹介します。
比較の前提:DMPには2種類ある(プライベート/パブリック)
まず重要な点として、「DMP」と一括りにされがちなツールには、性質の異なる2つの種類が存在します。
- プライベートDMP:自社で収集したデータ(1st Partyデータ )を中心に管理・分析するプラットフォームです。ウェブサイトのアクセスログや購買履歴などを統合し、主に自社サイト内でのパーソナライズや、既存顧客向けの広告配信などに活用されます。一部のDMPは個人識別情報(PII)を保存する例もありますが、CDPの高度な身元照合機能やデータ管理能力には及びません 。
- パブリックDMP:第三者が提供する大規模なオーディエンスデータ(3rd Partyデータ )を扱うプラットフォームです。様々なウェブサイトの閲覧履歴などからユーザーの興味関心を推測し、主に自社とまだ接点のない潜在層への広告配信などに利用されます。3rd Partyデータは匿名データであり、主にCookie履歴、IPアドレス、デバイス情報などが含まれます 。
この2つのDMPとCDPは、目的も扱うデータも異なります。
CDP vs DMP:目的とデータの違い
CDPと2種類のDMPの最も大きな違いは、「誰の」「どんなデータ」を「何のために」扱うかという点にあります。
- CDPの主役は「個客」:CDPは、氏名やメールアドレスといった個人情報(PII )と、あらゆる行動データを紐づけ、実在する「個人」を深く理解することを目的とします。顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかなコミュニケーション(One to Oneマーケティング)を実現するためのデータ基盤であり、顧客ライフサイクル全体にわたる長期的なデータ保持が可能です。
- DMPの主役は「匿名の集団」:一方、DMP(特にパブリックDMP)が扱うのは、個人が特定できない匿名の「オーディエンスデータ」です。特定の興味関心を持つユーザー群(セグメント)を作成し、広告配信を効率化することが主な目的となります。DMPは広告ターゲティングに特化しているため、比較的短いデータ保持期間(通常90日未満)です。
ひと目でわかる比較表(CDP / プライベートDMP / パブリックDMP)
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。自社の目的と照らし合わせて、どのプラットフォームが最適か判断する際にお役立てください。
比較項目 | CDP | プライベートDMP | パブリックDMP |
---|---|---|---|
主な目的 | 個客の深い理解、LTV向上 | 既存顧客・見込み客への施策最適化 | 新規顧客へのリーチ、認知拡大 |
扱うデータ | 1st Partyデータ(個人情報含む) | 1st Partyデータ、一部3rd Partyデータ | 3rd Partyデータ(匿名) |
データ主体 | 「個人」 (IDで統合) | 「匿名ユーザー」(Cookieで統合) | 「オーディエンス/属性」(匿名) |
データ蓄積 | 永続的・長期間 | 比較的短期間 | 短期間 |
リアルタイム性 | 高い | 中程度 | 低い |
得意な施策 | One to Oneマーケティング、CRM連携 | Webサイト内パーソナライズ、広告配信 | ターゲティング広告、類似ユーザー拡張 |
このように、CDPは「顧客と長期的な関係を築くための基盤」、DMPは「広告アプローチを効率化・最適化するためのツール」と大別できます。Cookie規制の強化が進む昨今、自社で顧客データを蓄積・活用できるCDPやプライベートDMPの重要性はますます高まっていくでしょう。
CDPの活用事例
弊社がクライアント企業様に対して行った、CDPの基盤構築とそれを基にした施策支援の事例をご紹介します。これらの事例は、CDPがどのように具体的な成果に結びつくかを示す「経験」に基づいた情報であり、貴社のCDP導入検討の参考になるかと思います。
【スポーツ協会様】チケット売上最大化に向けたファンデータ活用基盤構築・施策運用支援

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スポーツ協会様が保有するさまざまなファンデータをCDPに統合し、顧客理解とマーケティングの最適化を図った事例です。
- 様々なシステムに蓄積されたファンデータ(CRMデータ、購買データ、ウェブサイト閲覧データ等)をCDPを構築し、統合。
- CDPに蓄積したデータからファンの購買傾向・興味関心を分析。BIツールに連携し、全社での共有。
- ファン分析等をMAツールに連携し、メールマーケティングにおいて最適な運用を実施。
1. データ収集と統合
まず、スポーツ協会様の複数システムに蓄積されたファンデータをCDPに収集し、ファンの行動や嗜好に基づいたデータベースを構築しました。これにより、顧客データの抜け漏れや分散を防ぎ、詳細な顧客像の把握を可能にしました。
2. データ統合・分析
CDPに蓄積されたデータをもとに、ファンの購買傾向や興味関心を深く分析しました。この分析には、ファンがどのようなイベントに興味を持っているのか、どのタイミングで購入を行ったのか、どの製品に対して特別な関心があるのかなどの詳細な情報が含まれます。ファン一人ひとりの属性や興味関心をより正確に把握することが目的でした。
また、この分析結果をBIツールに連携し、企業全体に分析結果を共有することで、マーケティング戦略や営業活動に反映させることができました。これにより、マーケティング部門だけでなく、営業部門や経営陣もこのデータにアクセスし、ファンの行動に基づいた意思決定を行うことができるようになりました。
3. マーケティング施策の最適化
CDPで得られたファンデータや分析結果は、MAツールにも連携されることで、メールマーケティングの自動化が実現しました。ファンごとの興味関心に基づいたパーソナライズされたメールが配信され、シナリオに基づくキャンペーンを効果的に実施可能となりました。
たとえば、特定の試合に頻繁に参加しているファンには、次のシーズンチケットの案内を送ったり、過去に購入したグッズに関連する新商品情報をパーソナライズして送信したりすることができます。このような個別化されたマーケティングは、ファンのエンゲージメントを高め、売上の増加に寄与します。
さらに、配信されたメールの効果検証も同時に行われ、CDPに戻されたデータを元にして、次のマーケティング施策をさらに最適化していくサイクルが形成されました。常にデータに基づいたマーケティング活動が可能となり、効率的な顧客管理とマーケティング運用が実現したのです。
この事例全体からわかるように、CDPを活用することで、顧客の行動データを一元管理し、全社的に共有してマーケティング活動を最適化することが可能です。特に、顧客ごとの興味関心を深く掘り下げることで、パーソナライズされた体験を提供し、企業と顧客とのエンゲージメントを強化することができます。また、CDPはMAツールやBIツールなど外部ツールと連携することで、データの可視化や効果的な施策実行を支援し、企業全体のマーケティング活動をサポートしてくれます。
【製薬会社様】医療関係者・患者のニーズ可視化を目的としたデータ活用基盤構築・施策支援

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製薬会社様が医療関係者や患者の行動データを統合・解析し、効果的なマーケティングおよび営業活動を支援するためにCDP(Treasure Data CDPを採用)とBIツールを活用した事例です。
- 医療関係者・患者のウェブ行動データの蓄積、CRMデータ連携を活用した興味関心の解析を目的とした環境構築PoC。
- CDPおよびBIツールの構築。
- 医療関係者・患者の興味関心解析と解析結果に基づいたコンテンツ製作・広告活用等のコンサルテーション。
1. データの収集とCDP構築によるデータ統合
弊社が支援した製薬会社様は、複数のデータソースから医療関係者や患者のデータを収集していました。それらのデータをTreasure Data CDPに集約し、統一された形で管理したことで、顧客データの抜け漏れ防止や分散したデータの一元化が実現し、詳細な顧客像の把握が可能になりました。
具体的には、Treasure Data CDPを利用して、医療関係者や患者の行動データを一箇所にまとめて統合し、データの可視化を実施。このデータ統合により、各個人の行動パターンや嗜好が明確にわかるようになります。たとえば、医療従事者がどの治療法や薬品に興味を持っているのか、患者がどの疾患について情報を探しているのかを詳細に分析できます。
この分析結果は、BIツールを使用して視覚化され、組織内のステークホルダーに共有されました。BIツールを活用することで、複雑なデータでも誰もが理解しやすい形で提示でき、データに基づく意思決定がしやすくなりました。
2. データをもとにした施策提案
解析されたデータをもとに、医療関係者や患者の属性や興味関心に合わせて、具体的な施策をご提案しました。
- ホームページコンテンツの最適化:
医療従事者や患者が興味を持つ内容に基づいて、ウェブサイトのコンテンツをパーソナライズしました。訪問者が必要とする情報に迅速にアクセスでき、ユーザーエクスペリエンスが向上しました。 - 広告ターゲティングの最適化:
興味を持っているテーマや閲覧行動をもとに、適切なタイミングで効果的な広告を配信しました。広告の効果が高まり、リソースを無駄にしない効率的なマーケティングが可能になりました。 - MR(医薬情報担当者)への営業活動支援:
BIツールで得られた分析結果をもとに、医療関係者の興味や関心に合った情報を提供することで、より効果的なコミュニケーションを図ることが可能になりました。
CDPとBIツールを通じて得られた分析結果は、全社で共有され、医療関係者や患者の理解に基づいた施策が実行される体制が整いました。コンテンツマーケティングや広告運用、営業活動においてデータを活用し、ターゲットに最適な情報を提供することで、ビジネス成果の向上を目指すことができた事例です。
この事例は、他の業界でも活用できるヒントが詰まっています。例えば、小売業や金融業においても、顧客データを統合して行動分析を行い、パーソナライズされたマーケティングやサービスを提供することで、エンゲージメントを高め、ビジネス成果の向上につなげることが可能です。CDPとBIツールを組み合わせることで、どの業界でもデータ主導の施策が実現しやすくなるでしょう。
顧客への理解を深めるためにCDPツールの活用は有効
CDPは、データの収集、統合、分析を行う「顧客情報基盤」です。ツールごとや部署ごとに分断されていて、社内で有効活用できていなかったデータを一元管理することで、顧客一人ひとりの人物像を浮き彫りにし、より有効なマーケティングにつなげる機能を持っています。
CDPを活用することで、顧客をより深く理解し、適切なマーケティング施策を実施することが可能です。データ活用によりビジネスを成長させたいのであれば、ぜひCDPツールの導入を検討してください。
CDP導入前に押さえておきたいポイントについては、以下の記事でご紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

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