ゼロパーティデータとは?注目される理由や取得方法を解説
近年、消費者の個人情報の取り扱いに関する慎重さが強化されています。実際、消費者の属性情報や行動履歴のデータがマーケティングに活用される技術が進歩したことで、逆に消費者にとっては「いつの間に自分の情報が把握され、どこまでビジネスに活用されているのだろうか」という疑問や懸念を生じさせる機会が増えています。
このような不信感を持たれるデータ活用のありかたを是正する概念として、「ゼロパーティデータ」が注目されています。
ゼロパーティデータは、消費者のデータをいつの間にか勝手に取得するのではなく、消費者にデータ提供を適切な形で要請して得たデータです。
本記事では、ゼロパーティデータの定義から他のデータ(ファーストパーティからサードパーティまでのデータ)との違い、注目される背景、そしてメリットとデメリットを解説し、ゼロパーティデータの取得方法や活用例を紹介します。
ゼロパーティデータとは
Forrester Research社が提唱
ゼロパーティデータとは、消費者が広告主からの何らかのオファーと引き換えに、広告主に対して使用することを許諾した個人データを指します。
ゼロパーティデータは調査会社のフォレスター社が2018年から提唱している用語で、個人がブランドにどのように認識して欲しいのかという情報も含まれると考えられています。
ゼロパーティ、ファーストパーティ、セカンドパーティ、サードパーティの違い
ゼロパーティデータをより理解するために、ファーストパーティからサードパーティまでの意味を確認しておきましょう。
ゼロパーティデータ
ゼロパーティデータとは、広告主から提供される何らかの対価と引き換えに、消費者が自ら提供する個人情報です。
提供した情報は、広告主によって情報提供者にもメリットのある使われ方をすることが期待されているため、消費者に広告主に対する信頼があることが前提となります。また、広告主にとっても、消費者に関する信頼できる情報を得られるというメリットがあります。
ファーストパーティデータ
ファーストパーティデータとは、企業がみずから収集して蓄積した、顧客やユーザーに関する情報です。消費者から必ずしも同意を必要としない情報で、ユーザーがWebサイト上やアプリ上で行った操作記録やダウンロード履歴、購入履歴などのデータになります。
ファーストパーティデータは観測により得られた情報で、顧客やユーザーに関しての分析は推測によるため、正確性ではゼロパーティデータに劣ります。
セカンドパーティデータ
セカンドパーティデータとは、企業が他の企業から取得する消費者データです。
自社では取得できない情報をパートナー企業から得ることができるメリットがある反面、取得できる情報の範囲や取得方法について自社ではコントロールできません。
たとえばパートナーのポイントカード会社から加工された会員情報の提供を受けることなどが該当します。このようなデータを、自社のマーケティングに活用します。
サードパーティデータ
サードパーティデータとは、自社やパートナー企業以外の第三者が提供しているデータです。たとえば、Googleの広告を出稿する際、GoogleがさまざまなWeb上でトラッキングして収集したデータに基づいてターゲティングすることが該当します。
サードパーティデータは自社の顧客やユーザー以外の消費者の情報を活用できるメリットがある反面、第三者から提供されたデータに基づいて推測した消費者データであるため、信頼性は低くなります。
また、現在進められている個人情報保護の規制強化という自社ではコントロールできない環境の変化により、データの活用ができなくなるリスクがあります。
ゼロパーティデータはなぜ注目されるのか
世界的に個人情報保護の強化が進む中で、「GDPR(General Data Protection Regulation)」「CCPA(California Consumer Privacy Act)」などが策定され、サードパーティCookieを段階的に廃止するブラウザが増えており、ユーザーは容易にトラッキングを拒否できるようになりました。
また、企業のマーケティング活動においてもGDPRを遵守しなければ多額の罰金が科せられることから、サードパーティCookieの非推奨化が進められています。
そのため、企業はマーケティングにおいて、消費者が同意の上で提供してくれたデータを活用する必要が生じています。また、消費者が直接提供するデータには高い信頼性が伴うことも、ゼロパーティデータが注目されている理由です。
ゼロパーティデータでのメリットとデメリット
メリット
正確性
ゼロパーティデータは消費者個人が、自ら広告主のオファーに同意して情報を提供しているため、信頼性と正確性が高くなります。
たとえばサードパーティCookieで、ユーザーの閲覧履歴から腕時計が紹介されているWebページを閲覧していた情報を取得した場合、この情報だけでは本人用に購入を促す広告を表示すべきなのか、他者へのプレゼント用の贈り物としての購入を促す広告を表示すべきなのか把握できません。
しかしゼロパーティデータで、このユーザーの趣味が時計であることの情報が提供されていれば、企業はこのユーザーが自分で使用する時計用としての販促を行うことができます。
信頼性
ゼロパーティデータは、消費者が自ら企業に対して情報を提供しているため、情報の提供者も明らかであり、企業にとっては信頼性の高い情報となります。
一方、消費者にとっては、自分が提供した情報が正しく活用されると見込んでいることから、企業に対する信頼性が高いことも表しています。
ポストCookie対策
サードパーティCookieを利用した広告は、ユーザーの行動をトラッキングして表示しているため、ユーザー側から見れば、いつの間にか自分の行動が追跡されているという不安感や不快感を抱かれるリスクがあります。
また、世界の潮流が個人情報保護の強化に向かっていることからも、今後はサードパーティCookieに依存したマーケティングを行うことが難しくなります。
一方、ゼロパーティデータは、自ら情報を提供するほど信頼している企業からの広告などに活用されるため、消費者にとっては自分に役立つ情報が提供されているという好感を持つ可能性もあり、ポストCookie対策として有力です。
デメリット
ゼロパーティデータにないデメリットもあります。
それは、データ収集の際にユーザーへの対価を用意するためのコストと、ユーザーの同意を得る手続きの手間がかかること、そして既存の顧客や広告主からのアプローチに応じてくれたユーザーに関する分析しかできないことです。
そのため、マーケティングに十分な規模のデータを収集することが容易ではなく、特に新しい市場を開拓するためのマーケティングデータとしては効果が限定的になる可能性が高いという課題が残ります。
ゼロパーティデータの取得方法
ゼロパーティデータは無償で獲得することはできません。企業は、情報を提供してくれるユーザーに対して対価を提供する必要があります。
たとえばユーザーは次のアクションを起こす際に、情報を提供してくれます。
- プレゼントや懸賞への応募
- 賞品付きクイズやアンケートへの応募
- コンテストやイベントへの参加
- 無料セミナーへの申し込み
- ホワイトペーパーなど有益な情報のダウンロード
これらのアクションを起こす際に、企業に対してマーケティング活動への利用に同意した上で情報が提供されれば、それがゼロパーティデータとなります。
ゼロパーティデータの活用例
ゼロパーティデータは、情報を取得した直後に活用できます。たとえばアンケート形式でユーザーが回答した情報でパーソナライズできるシステムを用意しておけば、すぐにユーザーに適した顧客体験を提案できます。
金融機関であれば、アンケートに回答されたユーザーの情報をパーソナライズして、そのユーザーのライフスタイルに最適な金融商品の提案を行うことができます。
また、美容や健康に関する商品を販売している企業であれば、ユーザーの年齢や体質、健康状態などに適した商品をレコメンドすることもできます。
このように、ユーザーから提供された情報をパーソナライズすることで、コンバージョンを高める施策を行うことができるのです。
ゼロパーティデータを活用したマーケティングは、消費者の個人情報を守りながら、同時に消費者により有益な顧客体験を提供できることから、ビジネスの持続性を高める取り組みとして有効なマーケティング手法となるでしょう。
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