MAツールのスコアリングとは?意味や手法、運用のポイントを解説!

マーケティングオートメーション

現代のビジネスにおいて、膨大なデータをいかに活用するかが企業の成長を左右する重要な要素となっています。その中で、顧客やリードの行動データを数値化し、購買意欲を評価する手法としてスコアリングが注目されています。

スコアリングは、適切に活用することでインサイドセールスやマーケティング活動の効果を劇的に向上させる可能性を秘めています。しかし、その導入と運用は決して簡単なものではありません。データの精度や評価基準の設定、結果の解釈など、さまざまな課題に直面することもあります。

また、スコアリングは万能ではありません。すべての顧客行動を完全に予測して管理することは難しく、常に結果が想定通りになるわけではないのです。それでも、スコアリングをうまく使いこなせば、競争の激しい市場で他社と差をつけるための強力な武器となり得ます。

この記事では、スコアリングの基本的な概念から、その導入プロセス、そして活用する際の注意点について詳しく解説します。スコアリングを通じて質の高いリード(ホットリード)を見極めることは、ビジネスの成功に欠かせません。戦略的に活用することで、貴社のビジネスを次のステージへと進化させる一助となるでしょう。

■この記事のポイントまとめ
  1. スコアリングは、顧客やリードの属性や行動を数値化し、購買意欲を評価する手法であり、営業やマーケティング活動の効率化に重要な役割を果たす。
  2. スコアリングの目的は、マーケティング活動の最適化と営業活動の効率化であり、適切な顧客を抽出し、ターゲットへのアプローチを最適化すること。
  3. スコアリングを実施することで、マーケティング施策の効果測定がしやすくなり、施策の優先順位を客観的に決定することが可能になる。
  4. スコアリングには、属性スコアリング、行動スコアリング、活性度スコアリングの3つの手法があり、顧客の属性、行動履歴、活性度合いを評価基準として活用する。
  5. スコアリングの導入により、マーケティング部門と営業部門の連携が強化され、商談率の改善や売上向上に寄与する。
  6. スコアリングを効果的に運用するためには、PDCAサイクルを回し、データ分析を通じてルールの見直しと改善を行うことが重要である。
  7. スコアリングを支えるMAツールの選定は、自社の課題や既存システムとの連携を考慮しながら行い、マーケティング活動を自動化・効率化することが求められる。

スコアリングとは?

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スコアリングとは、取引先や見込み顧客の属性や行動に対して点数を付与し、顧客のステージや関心のある領域を数値化することを指します。これにより、顧客の購買意欲や興味を具体的に把握し、最適なアプローチを策定するための指標を提供します。スコアリングは、営業やマーケティング活動の効率化に欠かせない要素であり、ビジネスの成功を左右する重要なプロセスです。

昨今、スコアリングは多くのマーケティングオートメーションツール(MAツール)やカスタマーリレーションシップマネジメントツール(CRM)の基本的な機能としても広く利用されており、企業がデータに基づいた意思決定を行うための基盤となっています。

スコアリングすることで、自社サービス・製品への関心度やマッチ度を把握し、見込み顧客の検討状況の確認や顧客毎のステージに応じた適切なアプローチが可能となります。例えば、スコアリング結果に基づいて優先順位を付け、効率的なリードフォローを実現することで、インサイドセールスやフィールドセールスなどの営業チームは売上の増加に貢献できます。リードナーチャリングに欠かせない概念です。

スコアリングの目的

なぜスコアリングが必要なのか?

スコアリングの目的は、マーケティング活動の最適化と営業活動の効率化です。顧客の購買活動のオンライン比率が高まり、購買行動が長期化している昨今においては、顧客の検討状況に合わせたマーケティング施策を実施し、多数の顧客からアプローチすべき対象を適切に抽出することが重要になります。

アプローチすべき顧客の抽出

スコアリングでは、顧客が自社のターゲット要件(業種、企業規模等)を満たしているかを数値化し、自社とのマッチ度が高い企業を特定します。また、WEBサイト上での行動を評価し、自社サービス・製品への購買意欲が高まっている顧客を見つけ出すことができます。

さらに、あらかじめ営業担当と連携するスコアの基準を定めておくことで、営業担当は、スコアリングで高得点を記録した確度の高い見込み顧客リストへ優先してアプローチすることができ、営業活動の効率化に繋がるでしょう。

見込み顧客への適切なアプローチの実施

MAツールのスコアリング機能を使ってWEBサイトへのアクセス頻度やメール配信への反応等といった顧客の行動を数値化し、見込み顧客の検討状況を正しく判定します。それにより、適切なタイミングでのアプローチが可能となり、マーケティング活動を最適化することができるのです。スコアリングを継続的に活用することで、顧客との関係構築が強化され、最終的には売上の向上や顧客満足度の向上に貢献します。

スコアリングを実施するメリット

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スコアリングを実施するメリットは以下の通りです。

  • 効果測定や分析がしやすくなる
  • アプローチ対象や施策の優先度が決めやすくなる
  • マーケティング部門と営業部門の連携

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

効果測定や分析がしやすくなる

顧客を数値化することで、マーケティング施策の効果検証や分析ができるようになります。お客様を数値化して評価すると言うとあまり聞こえがよくありませんが、マーケティング施策を最適化していくために数値化は必要不可欠です。

PDCAを回しスコアリングの精度が上がれば、顧客理解も進み、より適切なアプローチが可能となるため、結果的にお客様にとってもプラスの作用をもたらすことができるでしょう。これにより、ビジネスのプロセスが改善され、最終的な成果の向上に繋がります。

アプローチ対象や施策の優先度が決めやすくなる

マーケティング施策を実施する際、施策案は多数考えたがどこから手を付けて良いか分からないといった悩みはよく聞かれるものです。また営業活動においては、顧客対応の優先度付けの基準が、属人的になりやすいといった課題もよくあることかと思います。

そんな時に、スコアリングによって数値化されていれば、優先すべきマーケティング施策、優先して営業をかけるべき顧客を、客観的な指標をもって判断することができるのです。これにより、リソースの効率的な配分が可能となり、重要な顧客への優先順位付けがスムーズに行えます。

マーケティング部門と営業部門の連携

マーケティング部門と営業部門との連携がスムーズになることも大きなメリットの1つです。連携ができていないと、それぞれの部門から同じ見込み顧客にアプローチをしたり、ニーズを読み違えてしまったりと、顧客から信頼を失うケースが考えられます。

スコアリングを導入すれば、マーケティング活動によって一定以上の検討度合いとなった見込み顧客が営業に引き渡されますので、営業活動の業務効率化、商談率の改善に繋がるでしょう。このプロセスにより、売上の向上や顧客満足度の向上といった具体的なビジネス成果を達成することが期待できます。

スコアリングを実施するデメリット

ここまでスコアリングの重要性やメリットについて解説してきましたが、
一方で以下にあげるようなデメリットがあることも事実です。

  • スコアによる評価と実績が合わない場合がある
  • 使いこなすにはトライ&エラーが必要

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

スコアによる評価と実績が合わない場合がある

データに基づいてスコアリングの設計を行った場合でも、「スコアは高いのに商談に至らなかった/商品が購入されなかった」といったケースや、逆に「スコアは低いが、商談後契約に至った/商品が購入された」といったケースが起こり得ます。

これは、見込み顧客の意思決定のプロセスといった内情が見えづらく、スコアに反映されない要素が関わっているからです。そのため、実績との乖離が続く場合には、評価方法の見直しや営業部門との連携をより強化し、実態に合った判断ができるように、スコアリングとその扱い方を最適化していきましょう。こうしたプロセスの見直しにより、ビジネスの成果を最大化することが可能になります。

使いこなすにはトライ&エラーが必要

MAツールの運用においても重要なポイントとなるスコアリングですが、どの行動にどれくらいのスコアを付与するかといったルール設定には正解がないため、使いこなすのは難しいと言われています。ルール設計の精度が低い場合、誤った判断基準によってアプローチをしてしまう可能性があります。

運用の中でトライ&エラーを繰り返し、ルールの見直しとアップデートを行うことで、スコアリングの精度を高め、より適切なアプローチが可能になります。スコアリングの導入は、常にPDCAを回しながら改善を続けることが必要であり、そのプロセスが最終的にビジネスの成果に結びつきます。

スコアリングの導入方法

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スコアリングの概要やメリット・デメリット等についてご説明してきましたが、本章ではスコアリングの導入方法、始め方について説明いたします。

スコアリングのルールを策定する

まずスコアリングを導入するにあたって、見込み顧客の状況を数値化するため、属性や行動を評価する際のルール(基準)を決める必要があります。異なる評価基準を組み合わせると、スコアリングの精度が高まります。以下3つの切り口からスコアリングルールを策定すると良いでしょう。

  1. 顧客の属性
  2. 顧客の行動履歴
  3. 顧客の活性度合い

①顧客の属性について

例えば顧客が役職者であれば+7点、競合他社の製品を使用している場合+5点など、顧客企業の規模や担当者の役職・職種、競合他社の製品・サービスの使用状況について、加点のルールを決めていきます。

担当者が決裁権者であったり、一般的には製品についてのリテラシーが高い場合、成約の可能性が高くなる傾向があるため、左記のような方にはスコアが高くなるような設定をすることがポイントです。

②顧客の行動履歴について

展示会やウェビナーへの参加、配信しているメールの開封やメール内URLのクリック、ランディングページやホームページの閲覧など、自社製品やサービスに関心を示すような行動(アクション)に対して加点をするようにします。左記のような行動から、顧客が自社の製品・サービスに対しどの程度興味を持っているかを把握し、適切なアプローチを行っていくようにしましょう。

③顧客の活性度合いについて

顧客の行動がいつあったかで興味・関心の程度は異なります。例えば、1年前~数カ月前に頻繁に行動履歴があった顧客で最近行動がない場合、既に競合他社の製品を導入したか、導入自体を一度やめた可能性があります。

一方で最近、料金表の閲覧やカタログのダウンロードがあった場合、自社製品の購入を検討している可能性が高く、アプローチをする必要があります。

そのため、顧客の活性度合いに応じてスコアを付与していくこともスコアリングをするうえで重要なポイントになってきます。これにより、顧客の検討状況を明確に把握し、優先すべき顧客を特定できます。

上記3点を押さえたうえで、スコアリングを導入するための残りのステップについて解説いたします。

スコアリングの条件設計

前述した3点の切り口からスコアリングを設計していきます。

①顧客の属性については、業種や企業規模等のリード情報から、自社のターゲット要件を満たす場合に高くスコアが付くよう設計します。

②顧客の行動履歴及び③顧客の活性度合いについては、顧客の成約・受注に至るまでの行動を可視化したうえで設計する必要があります。自社の顧客がどのような行動をとって成約・受注に至ったのかを把握し、詳細な仮説を立てて、どの行動に高いスコアを付与するかを決定していきましょう。

ただし、マーケティング担当者だけでは最適なスコアリング設計を行うことは難しいため、実際に顧客と相対する営業担当者と協力して設計・作成することが鍵となります。

営業担当者が何度も電話で対応して成約に至った、商談や対話の時間が長い顧客が成約に繋がりやすい等、定量的なものから、顧客が抱える課題感等の定性的なものも営業担当者と協力しスコア設計をしていくと良いでしょう。

営業担当者と連携することで、前述したスコア評価と実際の成約・獲得実績との乖離を減らしていくことができます。もちろん、スコアリング設計においては、マーケティング担当者の知見も必要です。HPの閲覧履歴、メールの開封状況、ウェビナー(Webセミナー)への参加、無料の資料請求等の顧客の行動履歴に基づいて、スコアリングの精度を高め、マーケティングと営業のプロセス全体の効率化を図りましょう。

スコアリングに欠かせないMAツール

スコアリングを自動化してくれるMAツールですが、どのように選定していけば良いかわからない方もいらっしゃると思います。スコアリングだけに注目してMAツールを選ぶのではなく、自社で抱える課題感であったり、既存システムとの連携可否、今後のデジタルマーケティング戦略に基づいて選定していくことが大切です。

MAツール選定等に関しては、以下の記事にまとめていますので、是非お時間のある時にお読みいただけると嬉しいです。

スコアリングの運用ポイント

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「スコアリングの導入方法」で解説いたしましたが、スコアリングの導入段階では、正確なスコア付与が難しく、運用しながら改善していく必要があります。ここでは運用のポイントについて説明いたします。

データの収集と分析

成約に至った顧客の行動を可視化することが必要であることは既にお話いたしましたが、リード(見込み顧客)が可視化した行動をどの程度実施しているか、またその行動がどの程度成約に影響を与えているか、データを収集し分析することが大切です。

過去に成約に至った顧客と同じように行動するリードは、成約確度が高いといえます。スコアリング導入後、成約に至ったリードの取った行動はスコアリングの基準値になるため、必ず分析するようにしましょう。

分析後、どの行動がもっとも成約に繋がったのか、あるいは成約には寄与しなかったのかを確認し、スコア付与を適宜見直すようにしましょう。

チームでの連携方法

スコアリングで設定する得点基準や運用について、チームに適切に共有する必要があります。客観的な視点でチェックしてもらうことで運用をスムーズに行えたり、改善点について気付きやすくなるためです。

営業担当者との連携がスコアリング設計で大切であることはお話ししましたが、近年は市場環境の変化が激しいため、最初に設定したスコアリングが現状に適さなくなってしまうことも起こりえます。

そのため、設定したスコアリング基準が正しく機能しているか、数カ月に1回チーム関係者で集まり、定期的に確認するようにしましょう。その場合、上記でお話ししたデータが非常に大切になってくるため、必ず分析を行うようにしましょう。

この時、営業担当者からのフィードバックも大変重要です。設定した仮説・スコアリング方法が適切であったかどうか、営業チームの意見も必ずもらうようにしましょう。

手間はかかるかもしれませんが、上記のようにPDCAを回しスコア設定を精緻化していくことが、スコアリングを運用していくうえで重要となってきます。

まとめ

今回、スコアリングについて解説していきましたがいかがでしたでしょうか。これまでスコアリングを実施したことがない企業においては、ハードルが高いと感じられたかもしれませんが、紹介した内容でまずは導入してみることが、効率的なマーケティング及び営業活動の土台となります。

自分たちだけで有効な施策を実施していくことが困難と感じられる方は、弊社(株式会社クロスリスティング)にぜひご相談ください。

スコアリング設計や仕組み化を含め、MAツールの導入・運用サポートやコンサルティングをしておりますので、サービス内容や施策事例の詳細など、まずはお気軽にお問い合わせいただけたらと思います。ご清覧ありがとうございました。

著者(writer)
Sienca 事務局

MA(マーケティングオートメーション)の基本設計や導入支援、運用サポートを実施しているチームです。MAのみならず、広告やCDPと連携した施策の実行経験も豊富であり、それらをもとにブログをお届けします。

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